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さくらが4才のピアノ教室を習い始めからだが、楽譜などが大きく、また市販のカバンで娘が持ちやすいものがなかなかないため、妻が手作りで娘のカバンを作ってそこに楽譜などを入れて通っていた。
ピアノ教室の友達やそのママからは絶賛だった。
I先生に出産祝いを渡しに行ったあの日から2週間くらいあとのこと。
妻とさくらがレッスン室の前で待っているとMちゃんとMママが来た。
Mママはこの前の件を忘れていたかのように馴れ馴れしく
「さくらちゃんのかばん可愛いね!手作りなんでしょ?」
から話題が始まり、
「さくらちゃんのその服も手作りなの?綺麗ねぇ。いいなぁ・・」
と少しずつ雲行きが怪しくなって来た。
「今度、旦那の実家に帰るから娘の服とカバン作ってよ。そうすれば少しはできる嫁って旦那の家からの評判も上がるじゃない!8日までにはお願いね。」
「え?そんなのあなたが作るか、無理だとしても人に頼むことじゃないですよね?」
「私は仕事してるし暇じゃないの!そういうの好きなんでしょ。」
そのあとも都合の良い理屈や要求を並べるママ。
そのママの話を聞くと、妻の手間を一切考えてないだけでなく、材料費までもうちに払わせるつもりらしい。
どこまでずうずうしいんだ!
妻は
「無理です!」
ときっぱり言うと、Mママは豹変。
「何よ!少し手作りができるからって!わざわざ見せびらかすとか嫌味?私の立場はどうなるのよ!」
のようなことを大声で言い、レッスン室からもピアノの先生たちが驚いて見に来た。
妻は怖くなってさくらのレッスン室に一緒に入り、Mママはレッスン中にも関わらず娘の手を引いて帰った。
そしてレッスンが終わり、ピアノの先生からも
「何かあったら言ってください。」
と言った。
そして、不安そうにしているさくらとともに階段を下りて行く。
一階の廊下まで来ると、ピアノ教室の事務室から女の怒鳴り声が聞こえ、そしてそれはMママの声だった。
妻が行こうかどうか考えたが中から聞こえる怒号があまりにも凄かったので、娘に危害が及ぶといけないと思い妻とさくらは逃げるように帰ってきた。
後でピアノ教室の責任者から話を聞いてみると、Mママが
「さくらちゃんとそのお母さんに嫌がらせされている。さくらちゃんを辞めさせるか、他のピアノ教室に転校させてほしい。」
「ピアノ教室に他の人が羨ましがるような高価なもの、または手作りなどのグッズや持ち物を持って来ないというきまりを作ってほしい。」
のようなことを感情的に言っていたとのことだった。
ピアノ教室側としては、さくらちゃんやお母さんがどんな人なのかはよく知っているし、Mママが主張するようなことが間違っているのは分かっている。
一方で、Mちゃんに罪はないのでMママが原因でピアノ教室を辞めさせたりはできない。
今後は、さくらちゃんとMちゃんのレッスンが同じ曜日にならないように配慮し、それでも何かあったらこちらとしても対応するという話だった。
住んでいる地域の関係上、他のピアノ教室に変えることは難しくMちゃんとは小学校が違うので直接会うことがなければ大丈夫とさくらをそのままピアノ教室に通わせていた。
それから約2か月後。
ピアノの発表会があり、俺と妻、娘の3人で会場に向かった。
会場に着き、ホールの席に着こうとしていると、妻が立ち止まり近くにいる母娘を見てこわばっていた。
相手も妻に気づき
「あら、さくらちゃん。お父さんも一緒なのね。」
と言った。
俺やさくらに対しては笑顔だが、妻に対しては目つきが違う。
一目でこの人がMママだと分かった。

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レッスンの生徒たちは舞台裏に集合なので、子供たちは親に見送られながら出ていった。
そしてその場で俺と妻と対峙するMママ。
何も言わなくても緊張感は伝わって来た。
俺はMママに
「Mさんですね。いつもお世話になります。ちょっと確認したいことがあるのでホールの外でいいですか。」
と言って、妻はホールに残らせ、俺はホールの外の廊下でMさんと話をした。
「この度は、妻がMさんに失礼なことをしたと聞いて申し訳ありません。」
「そうですよ!奥さんは私と娘に持ち物を見せつけたり、散々嫌がることを言ったんですよ。分かります?」
そしてMママは延々と愚痴をこぼした。
一通り聞いたあと、
「それは失礼しました。ですが、いつまでも母親同士で蟠りがあるのは子供達にも影響しますので、今夜、ピアノの発表会の打ち上げとしてMさんと、うちの妻、私の3人で食事でもしませんか。場の関係上、子供達は家に預けておいて、洋食の料理店で仲直りでもしましょう。勿論、いいお酒も飲めます。」
Mさんは不満そうな顔が一気に変わって了承した。
「やっぱり旦那さんは話が分かる人ですね。」
と言われてもニコニコしたままの俺。
分かってねーのはどっちだよ。
(つづく)
-END-
『全4話(42歳・♂)』さんからの投稿です
ありがとうございます。
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