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舌と舌とが触れあい、それに合わせて唾液が混ざり合う心地よさに頭が痺れそうになった。
「大人の、キスやで」
照れくさげにそう言ったサチコさんの表情に、オレの中の何かが吹っ飛んでしまった。
いつの間にか、オレはサチコさんを押し倒していたのだが、サチコさんは嫌な顔ひとつしなかった。
優しい、かすかな笑みさえ浮かべて、見下ろすオレをじっと見つめていた。
「……」
今度は、オレからサチコさんの唇に唇を重ねていた。
そっと、触れて、そして優しく吸う。
サチコさんがさっきそうしたように、オレもサチコさんの唇を舌でなぞり、そしてかき分けて差し込んだ。
サチコさんの腕が、オレの首に絡みつく。
手のひらが、オレの髪をかき分け、撫でる。
それに合わせて、オレも舌をくねくねと動かし、サチコさんの口の中をなぞり、かき回していた。
「んんっ……」
かすかなうめきが漏れる。
ついさっき童貞を捨てたって言っても、それで劇的にオレの何かが変わるってもんじゃない。
どうしていいか分からぬまま、無我夢中で、オレはサチコさんのパジャマの上のボタンを次々と外していった。
全部外し、前をはだけるとぷるん、としたサチコさんの胸がこぼれ出る。
サチコさんはブラを付けていなかったのだ。
さっき一戦交えた時にも見てるはずなのだが、改めて見るとその肌の白さと柔らかな質感を感じて心が震える。
「めっちゃ、きれい、ですよ」
自然とオレはそんなことを口にしていた。
そして、キスの時と同じように、そっと唇を触れさせ、そしてついばんだ。
はむはむ……と唇で優しく噛むようにしてから、赤ちゃんみたいに、サチコさんの褐色付いた乳首を舐め、そしてしゃぶって吸う。
「あっ……んぅぅ」
サチコさんの吐息が漏れ、身体がかすかに伸び上がる。
もちろん、今だからこうやって書けるのだけど、当時はそんなに反応を確かめる余裕なんかない。
右、左、って代わりばんこに舐めたり吸ったりするだけだった。
ただ、女性の肌に触れていられるって実感は当時のオレにとってはそれだけでたまらないものだった。
今だったら、もっと色々とできたのだろうけど、おぼつかない手つきで胸を揉みながら、乳首に吸い付くので必死だった。
「……ね、お布団行って、しよ」
さすがに焦れたらしいサチコさんの言葉に我に返る。
「あ、はい、そうっすね」
それでも、サチコさんはあの優しげな微笑みをたたえたままだった。
オレががまだ若かったから許してくれたんだろうと思う。
今なら、そこでおしまいのはず。
ふすまを開け、奥の部屋に移動する。
簡単にたたまれた布団を広げて、サチコさんはパジャマを脱ぎだした。
オレも、慌てて着ていたものを脱いで、トランクス1枚になる。
「おいで」
ぺたんと布団の上に女の子座りしたサチコさんが両手を拡げて、オレを招く。
「はい」
身体は興奮して熱くなっていたが、さっきよりは少し冷静になった。
当時はまだAVなんてそうそう見れるもんじゃなかったので、雑誌か何かで覚えた知識を総動員して、オレはサチコさんの身体に挑むことにした。
さっきと同様、胸から責めはじめる。
けど、今度は単調にならぬよう、色々と舐め方や揉み方を変えていく。
ずっと同じ所じゃダメなんだっていうのは、何となく分かったので、ぎこちないながらも、胸から、脇、そしてお腹へと徐々に移動するようにした。
パンツだけになったサチコさんの身体は、むっちりとしていて、とても感動的だった。
オレのぎこちない責めでも、さっきよりはましになったのか、眉を顰め身をよじるサチコさんの反応は、少し自信を付けてくれる。
「気持ち、いい、ですか?」
ムードもへったくれもないオレの問いに、サチコさんはうっとりと目を閉じたまま、頷いて吐息混じりの声を漏らした。
「うん……、ええよ、さっきより……上手やんか」
当然お世辞に決まっているのだが、その返事に気をよくしたオレは思い切ってサチコさんのパンツに手を掛けていた。
ずらそうとするオレに合わせて、サチコさんも腰を少し浮かせてくれる。
完全に生まれたままの姿にされて、さすがのサチコさんにもかすかに緊張した表情になった。
「なんか……恥ずかしいわぁ」
そう言って軽く頬を染め、視線を逸らすサチコさんの表情に、なんとも言えぬなまめかしさを感じた。
オレは何も言わずに、膝を立てたまま、ぴったりと閉じられたサチコさんの両脚に手を掛け、じんわりと開いていった。
当時はヘアヌードなんてのも裏本だのビニ本だとかでなきゃ見れないものだから、黒々としたアンダーヘア、そしてくっきりと色づいた裂け目の鮮やかな色につい見とれてしまった。
「そんなに見やんといて。ほんまに、恥ずかしいわ」
目を潤ませたサチコさんのささやきを聞いても、視線を外すことなんかできやしない。
「めっちゃ……エッチですもん。もっと、見たいです」
欲望に支配され、オレはそんなことを口走っていた。
「ふふ、ええよ……こんなおばちゃんのあそこでよかったら、見てもええよ」
照れくさそうに笑って言うサチコさん。
「おばちゃんやないですって……」
興奮のあまり声がかすれていたのは今でもよく覚えている。
完全にサチコさんの股間に顔を埋めるようにして、顔を近づける。
初めてじっくりと生の女性器を見る感動に、思わず息を呑んでしまう。
「……」
賞賛と興奮、感動を言葉にできず、無言でオレはサチコさんの裂け目をそっと指で拡げていた。
使い込まれた女性器は黒ずんでいる、なんて与太話に洗脳されていたせいか、意外に色素の薄い印象、そしてしっとりと湿り気を帯びた淫靡な美しさに胸が苦しくなる。
白っぽく光るクリトリスはまだ半ば以上包皮に包み込まれていた。
多分、気のせいだと思うのだが、むんとした牝の匂いが鼻をつく感覚にオレは理性を失ってしまった。
唇を裂け目に口づけ、そして夢中でしゃぶりつく。
舌先をねじ込み、肉襞をかき分けて舐め、ねぶり尽くす。
「うんぅ……っ」
ビクン、とサチコさんの身体が跳ね、反射的に太ももがオレの顔を挟み込み、締め付ける。
最初の内は、オレの口から漏れる唾液だけだったのだが、徐々にかすかな酸味と塩気の混じった何か、がオレの口の中を満たすようになっていた。
舐めるうちに固くしこっていくクリトリスに舌先を集中する。
弾いては、突き、そして転がす。
「あっ……んんぅ」
サチコさんのうめき声が、段々と熱を帯びたものに変わっていくのが分かった。
押し殺すようなくぐもったうめき声と、しかし隠しきれない荒い息づかい。
時折、痙攣にも似た鋭い震えがサチコさんの身体に走る。
(本気で感じてんのかな……?)
経験値の低さは当時のオレに答えを与えてはくれなかった。
女体の本気の反応など、当然のように知らなかった。
が、漠然と伝わる感触に後押しされて、オレは一層熱心にサチコさんの裂け目を責め続けた。
「んんーっ」
そのうちに、ひときわ鋭く、サチコさんの身体が跳ね、そして力の入ったうめきが長く伸びた。
腰が浮き、幾度か震えたあと、糸が切れた人形のようにくたっとなるのが分かった。
「はぁ……」
ややあって、大きく吐息を漏らしたサチコさんが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにオレの方を見るのが分かった。
「アンタ、舐めるの上手やなぁ。才能あるわ」
とろんとした表情のサチコさんにそう言われると嬉しくないわけがない。
「そうっすか? 必死やったんすけど……」
よだれにまみれた口元を手の甲で拭って、オレは一息ついた。
どうやら、サチコさんがイッてくれたらしいと分かって、なんとも言えない充足感のようなものがこみ上げてくる。
「気持ち良かったよ……。彼女できても今みたいにちゃんとしたげや」
よろよろと身体を起こすと、サチコさんは少し乱れた髪をかき上げた。
「アンタのんも、かちかちやん……」
そう言うなり、サチコさんはオレの股間に顔を埋めた。
四つんばいの姿勢で、ぱくんと隆起したオレのものをくわえ込んだ。
「あっ、ううっ」
温かく、ねっとりとした何かに包み込まれ、そして柔らかな、しかし意志を持った固まりが這い回る感触の心地よさに思わず声が漏れた。
「んっ……ふふっ」
鼻から抜けるようなサチコさんの吐息がオレの股間を包み込む。
オレとは違って、的確かつ熟練された舌のうごめきがもたらす快感に、オレのイチモツはさらに硬度を増していった。
サチコさんの口の中で、絡みついて泡だったサチコさんの唾液が、淫靡な水音を奏ではじめた。
「くうう……」
気持ちよさに堪えきれず、どうしても声が出てしまう。
「あっ、ヤバイっす、イキそう、ああっ」
我慢などできるはずがなかった。
オレのうめきに一瞬ぴくんと動きを止めたサチコさんだったが、おかしそうに目で笑うと、続けて責められていた。
放尿にも似た、しかし比べものにならぬほとばしるような快感とともに、オレのイチモツはその精を数度の身体の震えとともに吐き出していた。
サチコさんの、口の中に。
「んぅ……」
吐息混じりにうめきが漏れ、一瞬の脱力感に自然と目を閉じていた。
「んくっ……やっぱり若いなぁ……。さっきしたばっかしやのに、もう回復してるやん」
喉を鳴らしオレの放った精を嚥下したサチコさんは、満足げにそうささやくと、唇の周りを枕元のティッシュで拭って一笑した。
唾液と精にまみれたオレのイチモツに舌を絡め、ぱくりとくわえ込んでねぶり取ると、つんつんと指先で突く。
「まだ、元気やなぁ……。ふふっ」
ぺたんとお尻から座り直したサチコさんは、内股気味に膝を立てた姿勢で、両手を拡げてオレを招いた。
「おいで……。わたしも、アンタのんが欲しいわ」
うっとりとそう言うサチコさんの視線が、淫蕩な輝きを放っている。
「うん……」
オレとサチコさんは、完全に淫靡な空気に支配されていたのだった。
膝立ちでサチコさんに寄っていくと、オレはサチコさんの両膝を割り拡げた。
自分の手でイチモツを掴み、そしてサチコさんの裂け目にあてがうようにする。
拡げられたサチコさんのそこは、さっきオレが舐めたとき以上に濡れ、そして輝いて見えた。
「めっちゃ……濡れてますやん、おめこ」
オレがそうささやくとサチコさんはかすかに赤面した。
「そうや……男の人のん舐めたらな、わたしかって興奮すんねん」
早口でそう言って、顔を伏せ、上目でオレを見つめる。
その言葉に全身が熱くなる。
オレはサチコさんを見つめたまま、イチモツをぐっと押し込んだ。
「んんぅ……あっ」
予想以上に、サチコさんのそこは濡れていた。
殆ど抵抗感の無いまま、肉と肉がこすれあい絡みつく。
「くうん……っ」
こぼれたサチコさんの吐息がさっきよりも大きい。
オレの首に抱きついていたサチコさんの手に力が入るのが分かった。
その重みに負けて、サチコさんを押し倒す形になった。
「はぁ……」
温かな肉に包み込まれぎゅっと締められる快感にオレも声を漏らしていた。
「めっちゃ……気持ちいいです、めっちゃ」
うわごとのようにささやきながら、オレは抽送を開始した。
絡みつく肉に押し出される感覚に抗うように、ぐっ、ぐっ、とサチコさんの奥底に突き立てる。
「ぁあっ、あ……ぁ、ぁ、ぁんっ」
恥じらいからなのか、漏れる声を押し殺そうとするサチコさんだったが、我慢しきれず、時折声のオクターブが上がってしまう。
身をくねらせ、しかしオレに抱きつく力が強くなっていく。
肌と肌がより密着し、熱を帯びたからだがさらに熱を増す。
接合部からこぼれるぬめり気をかき混ぜる音が、徐々に大きくなっていった。
「あぁんっ、あっ……んんぅぅ」
漏れる声を、下唇を噛むようにして抑えるサチコさんの切ない表情が見えた。
その時なぜそうしようと思ったのかはよく分からないが、オレは繋がったままでサチコさんの唇に唇を重ねた。
「……ぁ、んっ、んんぅ……」
無理矢理に唇を合わせ、舌先をねじ込んでいく。
苦しげなサチコさんのうめく吐息が、オレの唇の中にも入り込んでくる。
抽送を止めないまま、舌先を舌先に絡めていく。
それに答えるように、サチコさんも舌を絡め、そして二人で夢中で吸い合った。
「んっ、ふぅん……んっ」
「んくっ、んっ、んっ、んーっ」
オレとサチコさんのうめきが絡みつき、そして一つになっていく。
息苦しさからなのか、痺れるような感覚が全身を走る。
次の瞬間、オレとサチコさんが繋がっているあたりから、それまで経験したことのなかった感覚が、なんて言うのかな、爆発するって感じだろうか。
快感が膨れあがってそれに全部が取り込まれたようにも感じた。
「んぁ、ああっ……」
「ンはっ、ああっ、あ、あ、あんっっ!」
いつの間にか重ねていた唇が離れ、オレもサチコさんも殆ど絶叫に近いうめきを漏らしていた。
鋭く、何度も身体が震える。
そして、あの放出感が全身を駆けめぐった。
視界が、一瞬真っ白になる。
滲んだ汗が、額から顔を伝いぽとん、と落ちる感覚があった。
「ふぁ……ぅ……ん」
「ふぅ……っ」
全身の力が抜け、唇から自然と吐息が漏れた。
しばらくそのまま、繋がっていた。
すっと視界が開けてきて、ぐったりとしたサチコさんの顔をぼんやりと眺めていた。
ピクン、ピクン、と時折身体を震わせ、上気した肌を薄いピンクに染めたサチコさんは、とてもきれいで、そして何よりもエロかった。
「……なぁ。大人のエッチした感想は?」
体液で汚れた下半身を処理した後、ごろんと横になったオレにまとわりつくように寄り添ったサチコさんは、オレの肩に頬を乗せてそうささやいた。
「なんか……めっちゃ変な感じです。悪い意味じゃなくて、その……」
どういう風に答えればいいのかすぐ言葉にできなくて、オレはもごもごと言った。
なんとも言えない高揚感と、達成感を旨く伝えられないもどかしさに困惑していると、サチコさんはくすくすと笑って、うっとりと目を閉じた。
「本気のエッチって気持ちええやろ……。わたしも、久しぶりやわ」
その表情に、オレはなぜか感動して、訳も分からずサチコさんの身体をそっと抱きしめた。
自然と頬と頬があたり、その柔らかさとくすぐったさに笑いがこみ上げた。
「ふふっ。なぁ、キス、して」
「うん」
身を起こして、オレはサチコさんの唇に唇を重ねた。
そのまま何となく一緒に寝て、朝になるとオレとサチコさんは近所にあったサ店でモーニングを食べ、そして別れた。
「……また、遊びに行きますね」
「アカンで。ちゃんと大人になってから」
そう言ってサチコさんはいたずらっぽく笑うと、手を振ってバイクに跨るオレを見送ってくれた。
「わかってますって」
オレも手を挙げるとバイクを発進させた。
ミラーの中のサチコさんは、しばらく、オレを見送ってくれていた。
だんだんと小さくなるサチコさんの姿を、オレは今でも忘れられない。
その後、3ヶ月ほどして、どうにか中型免許を取ることができたのだが、間抜けなことにRZ50で右直事故を起こしてしまい、オレは脚を骨折、3ヶ月ほど入院する羽目になった。
RZは廃車になってしまったので、夜出歩く足もなく、事故の保証金はあったけど、学校やら何やらで忙しく、次のバイクもなかなか買えぬままだった。
そんなこんなで、色々とあってオレもサチコさんの所に遊びに行くどころではなくなってしまった。
結局、オレは再びバイクに乗ったのは高校を卒業できることが決まってからだった。
別にバイクが無くったって、チャリでも良かったのだけど、ガキのつまらないプライドがあって、せっかく取った中型のバイクで行きたかったのだ。
ほんとはRZが欲しかった所だが、違う先輩の知り合いからSPレーサー崩れのぼろぼろのTZRを安く売ってもらうことになって、カウルがなかったTZRを丸目ヘッドライトに変えて、オレはまたしても親に嘘をついて夜の街に出かけた。
初めて行った時と街の雰囲気はまるで変わっていなかった。
今度は、目指す場所が決まっているので、やり手婆ぁどもの声には目もくれず、あのサチコさんとこの婆ぁがいたあたりを真っ直ぐ目指した。
だが、そこにはまるで違う婆ぁが客引きをしていた。
「お兄ちゃん、遊んでいかへん」
声をかけてくる婆ぁに、前にあった婆ぁのことを尋ねる。
だが、返ってきた答えはオレを失望させるものだった。
あの婆ぁは、ずいぶん前に店じまいしたのだった。
サチコさんのことも、聞いてみた。
婆ぁが店じまいする少し前に、この仕事を辞めて田舎に帰ったらしい、という話だった。
それ以上の消息は、分からない、とも。
結局、その日はその婆ぁのところで遊んだのだが、あのサチコさんとの時のような盛り上がりもなく、それ以降オレは新地に遊びに行くことも無くなった。
今ではオレも結婚して子供がいる身になったが、今でも変わらずバイクには乗り続けている。
免許も中型から大型にステップアップし、今乗っているのはB型のZX9Rになった。
実家から独立はしたが、そう遠くない所に今も住んでいるので、時折新地の近くやサチコさんの住んでいたあたりを通りがかることがある。
その度に、あの時のRZのミラーの中で小さくなっていくサチコさんのことを思い出し、胸の中が切なくなる。
もしかしたらサチコさんと再会できなくて良かったかもしれない。
骨折してバイクが廃車になる事故を起こしたと話してもサチコさんを悲しませるだけだし。