「おい!見てみろよ!前に座ってる女。パンツ丸見えだよ」
俺は隣に座っている仲間を肘でつついた。
俺が2年生の時、体育館で球技大会(球技大会ネタ多いけど、創作ではありません)のバスケの試合を観ている時のセリフだ。
F「えっ!?どこよ?」(FはFriendの略です)
仲間が超反応よく聞き返してきた。
「正面に座ってる女だよ」
俺は見ているのがばれてはいけないと思い、視線はそのままに顔を正面から逸らすように少し横を向いて答えた。
F「どこ?どこだよ!?」
気色ばんで興奮したように聞き返してくる仲間。
「ほらっ、正面少し右より(左だったかな?)に座ってるじゃん」
指差して方向を指示するわけにもいかず、俺は口頭で説明した。
F「おぉ~!マジかよっ!」
満面の笑顔を浮かべながら下を向き、この感動を噛みしめるように小声で答える仲間。
俺から始まったこの伝言ゲームは結局、横10人までつながった。
この時みんな一緒のポーズ・仕草だった。
ある時は下を向く途中に拝見(勿論正面に向きなおす時も拝見。所謂往復ビンタ作戦)。
またある時は顔を横に向け、視線だけは正面を向いている(眼球が痛かったが)。
しかし、みんな同時に同じポーズはとらない。
みなまで言わなくとも俺達の息はぴったりだ。妙な連帯感が生まれた一瞬だった。
F「ってゆーかさぁ~あの女パンツ全開って気付かないの?」
F1「あれ、まだ1年だろ?まだ中学生気分が抜けてないんじゃん?女としての自覚がないんだろ?恥じらいってもんがないんだよ」
純白のパンツを拝ませてもらっておいて、仲間たちは贅沢を言っている。
なんて罰当たりなやつらなんだ!
俺達の焼けるような視線を感じたわけではないと思うが、彼女は体勢を変えた。
F「あぁ~あ、もう見えなくなっちゃったよ」
F1「おい、他にもいないか探してみようぜ!」
F2「俺右から見るから、お前左から見ろよ」
北朝鮮の軍隊真っ青の指揮・命令系統、行動である。
結局は無駄骨に終わってしまったが、この時いくつかの収穫があった。
一つ、俺達はいつもまとまりがないが、エロでは一つになれるということが分かったこと。
二つ、伝言ゲームは以外に素早く、正確に伝わるということが分かったこと。
三つ、新しい彼女ができる段取りができていたこと(これは俺限定だったが)
パンツを全開にしている時も、一点に視線を集中させるそんなバカな男はいないはずだ。
いくらパンツが見れても肝心なビジュアルが悪ければ魅力も半減だ。
パンツ全開女(以下、Y)のビジュアルは、俺好みだった。
パッチリとした大きい二重の目が魅力的で、美人というよりかわいいタイプ。
身長は155cmぐらい、胸はCカップ(の大きい方)。
ビジュアルよし、しかもパンツ全開のおまけ付、更に(Kに)振られたばかりで哀愁を帯びている俺にとって、Yが気になる存在になるには時間は全く必要としなかった。
球技大会が終わり、体育館を出る時俺は仲間に聞いた。
「さっきのパンツ女、結構かわいくなかった?」
F「顔?そんなの見てねぇ~よ。それどころじゃなかっただろ」
こんな身近にバカがいた。
その日の夜、昼間の光景が頭から離れなく眠れなかった。
どうしてもあの子をものにしたい!絶対に付き合いたい!なにがなんでも手に入れる!
そう思い俺は決意と股間を熱く、硬くした。
しかし、ここでふとした疑問が浮かび上がってきた。
付き合うってどうやって?あの子名前なんていうの?クラスは?
オォ~~~ノォ~~~!!!ガッデム!!!ガッデム!!!
そういえば名前もクラスも分からねぇ~よ!どうやって探す?
聞き込みでもするか?しかしどうやって?
「あの~決して怪しい者ではないんすが、ちょっと聞きたいことがあるんですよ。球技大会の時、体育館でパンツ全開にしてた女知りませんか?えぇ、分かってますと。おっしゃりたいことは十分分かってますとも。質問は変態っぽいですけど、私はいたってまじめにお聞きしてるんですよ」って聞き込みするの?
かなりへりくだって聞いているがこれでいけるかな?
それとも1年のクラスをしらみ潰しに探すのか?しかし10組まであるんだぞ!?
それちょっと無理だろ。2年が1年のクラスをふらふら歩いて目立つのもイヤだし。
目立つだけならまだしも、ヘタしたらヘンな2年生がいるって噂が立つかもしれない。
あぁ~どうしよ~?もうすぐ1学期終わっちゃうよ~!二学期まで我慢できないよ~!
今でもそうなんだが、俺は欲しいと思ったものはすぐ手に入れないと気がすまないタイプ。
我慢って言葉は俺の辞書にはない。
今回の話がうまくいくなんて自信はなかったが、ダメならダメでもいい。
とにかく俺は結果がすぐに欲しい。
いい作戦が浮かばずしばらく考えてたが、俺はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
しかし俺のこのジレンマは翌日、仲間が集まり昨日の体育館での出来事を話していた時に、あっけないほど簡単に解決した。
F「昨日、体育館でさぁ~パンツ見せてる女がいてさぁ~」
F1「見せてるどころじゃなくて、全開だったよな~?」
うん、うんと一同にうなずくチェリー達。
「顔もかわいかったよな?」
俺は仲間のその子に対する評価を聞きたいと思い問いかけた。
F3「顔?そんなの見てねぇ~よ」
昨日パンツを見たメンバーのうち7、8人が集まっていたが半数以上は顔は見ていないと言う。
はぁ~ホント、バカばっか・・・
そのうちの一人が答えた。
F3「意外にかわいかったよな(こいつはバカじゃないな)」
「だろ?お前もそう思う?あの子なんて名前なのかな~?」
F4「なんでだよ?」
「いや、ちょっと気になってね」
F5「おっ前マジかよ~!?Kと別れた(振られた)ばっかじゃん?」
「それとこれとは別だよ」
呆れたような表情の仲間を尻目に俺はさらっと答えた。
F6「お前も好きだよなぁ~。で、もし分かったらどうするの?」
「アタックしてみようかなと思って」
F7「マジでっ!?」
F8「でもどうやって調べんの?顔しか分からないんだろ?」
「そうなんだよなぁ~それが問題だよなぁ~・・・ふぅ~」
ため息と伴に俺のアタック発言に盛り上がっていた場のテンションが一気に下がった。
そんな時、起死回生の発言をしたヤツがいた。H(俺じゃないよ)だ。
いつもはそんなに目立たない存在のHだが、この時はヒーローだった。
H「俺、知ってるよ」
みんなの視線が一気にHに集中した。
「はっ!?なんで?ホント知ってんの!?」
俺の熱い問いかけに、落ち着けという感じで手で制するようにして、Hは冷静に返事をした。
H「だって同じ中学出身だもん」
中学の時、生徒会長だったHは全校生徒の顔を覚えていると豪語していた。
Hの出身中学は山の中にあり、1学年1クラスぐらいの規模だったと思う。
その規模から推測するに、おそらく全校生徒は100人もいなかったのではないだろうか。
頭のいいHにとって、そんな少人数の顔を覚えることは朝飯前の芸当だろう。
実際Hは優秀だった。1年の時は入学試験の成績から学級委員長へと選出された。(見た目のインパクトで選出された俺とは大違いだ・・・)
中学まで頭のよかったHだったが、その後怠け癖がつき成績はズルズルと後退。
結局、2年から3年へと進級できず退学した(あと無免許で運転して捕まった)。
「で、なんて名前?」
俺のその問いかけに手を差し出すH。
「この手はなに?」
H「情報提供料だよ」
頭はよかったが雑魚扱いされていたHのこの態度。
その態度に周りは色めきたった。
F「お前ふざけんなよっ!名前教えるぐらいでなに言ってんだよ!」
F1「さっさと教えろよ!」
H「冗談だよ、冗談」
おちゃらけた口調で返事をするHが続けた。
H「名前はY・Y、家は俺の近くだから住所は○○。電話番号は家に帰れば分かるけど、住所が分かってるから電話帳で調べられるだろ?分かんなかったら言って?教えるから」
おぉ~H~お調子者で、コウモリなお前のことあまり好きじゃないけど、
今日は役にたってくれたよ、ありがとう~。
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俺は感謝の意味を込めてキャビンマイルドを1本、黙ってHに差し出した。
その日学校が終わると俺はすっ飛んで家に帰った。
家に着くなり、着替えもせず早速電話帳をめくった。
「えっと、Y、Y、Y・・・」
Yの項目を探し当てた俺の手が止まった。
「はっ!?なんだよこれっ!?一体何件あるんだよっ!?」
そう言わずにはいられなかった。
住所○○のYさん宅、少なくとも30件はあったと思う。田舎特有の現象である。
きっと周りは全部親戚に違いない。
こりゃダメだ。一軒一軒電話するわけにもいかない。
仕方ない、Hに借りを作るのはイヤだけど教えてもらうか。
また情報提供料とか、たわけたこと言われたらどうしよう?
そう思いながらHに電話をした。
しかし、その心配は杞憂に終わった。
『俺が(電話番号を)教えた言ったってことは(Yに)内緒にしておいてよ』
という条件だけをつけて、意外にもあっさりとHは電話番号を教えてくれた。
よしっ!これで電話番号は手に入れた。あとは行動(電話をする)あるのみだ。
普通なら勢いにまかせて今日電話すると思うが、ここでいざとなるとびびりまくる俺の負け犬、腰抜け根性が出た。
今日は日が悪い日を改めよう(結果としてこれがKに操をたてた2日の違いになるんだが)。
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