よく学校で産休に入る先生がいると、どこからともなく代わりの先生が来て、そして産休の先生が戻ってくるとどこへともなくいなくなる。
こういった先生たちがどこからくるのか考えたことはないだろうか?
その先生たちは「臨時的任用教員(常勤講師)」と呼ばれる非正規の職員なのである。
普通に考えてみれば、教諭(正規の教員)ならば、4月の時点で年度末まで「○○小学校の○年○組担任」のように年間を通して決まった仕事があるため、産休代替のために年度途中で他の学校に行くことなどできない。
さらに言えば、こうした臨時教員は正規の教員ではなく、正式に採用された訳でも、適切な研修(初任者研修など)を受けた訳でもない。
免許だけ持っていて講師登録されている人が、空きが出次第どこかの学校に代わりとして入るようになっている。
そしてその臨時教員は教員採用試験(正規採用の試験)に合格していない人たちなので、「能力が低い者」「人間性に問題がある者」が少なからず存在する。
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俺が中学1年生のときの体験。
俺たちの学年の副担任で、30代半ばのT先生という男の先生がいた。
国語の授業を担当していて、話が面白いのではじめのうちはいい先生だなって思っていた。
T先生はテニス部の顧問をしていて、放課後になるとテニスコートからよく怒号が聞こえてきた。
そのときはまだ、部活のときは熱くなるなどメリハリがある先生なんだなとプラスにとらえていた。
T先生の国語の授業を受けるなかで、読解問題の解説などが少なく文法に多めに時間を割いたりするなど、少しずつ授業の進め方に疑問を持ち始めた。
また「いつ・どこで・誰が・何をしたゲーム」という小学校のお楽しみ会でやるようなゲームで50分の授業を潰したこともある。
T先生は「宿題忘れ」に厳しく、放課後に宿題を忘れた生徒を生徒相談室に呼び出して指導をした。
勿論、宿題を忘れるのは生徒に非があるため、放課後に指導をしてくれるのはむしろありがたいことではあるのだが・・。
俺も宿題のノートをうっかり出し忘れたことがあり、放課後に同じ課題をもう一度書いて提出するというやや懲罰的な指導を受けたこともある。
そのようなこともあって、少しずつT先生に対して不信感を持つようになった。
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2学期になるとT先生の放課後の指導はかなりエスカレートしていった。
宿題をやってない、或いは忘れた生徒を犯罪者のように扱い、生徒相談室に呼び出し過剰な指導を行っていた。
初めは「課題が終わるまで帰さない」程度だったのが、「正座しろ」「空気椅子しろ」などまさに体罰といえる懲罰を課すようになった。
生徒相談室は本来なら「いじめ」や「不登校」など生徒の話をする部屋であり、校舎の端の目立たないところにある扉を閉めた密室であることが裏目に出ていた。
そのうち、テニス部で成績が振るわない子、T先生に反抗的な態度をとった子も呼び出されたりした。
生徒相談室で数十分間も正座させられたり、空気椅子させられたりさせられている複数の生徒たち。
さらに、土曜日の放課後に友達が残らされていたときは
「ちょっと、近くのコンビニで弁当を買ってこい!」
とパシリにされたという。
そして、友達が弁当を買ってくると
「何でこんな弁当買って来るんだ!食えねえ!もう一度買ってこい!」
とケチをつけられたらしい。
さらにT先生の国語の授業で、中3レベルの古典教材などを取り扱ったり、逆に極端に簡単な内容が出てきたり。
今思えば、T先生はろくに授業準備をせず教材を適当に選んだり、他の学年のものを流用してたんだと思う。
生徒が分からなそうにしていると
「勉強する気があるなら分かるはずなんだ!学ぶ気がないんだ!」
のような訳の分からない説教話で授業を潰したりした。
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そして11月にある学芸発表会(文化祭)で、3年の選択国語の生徒たちは劇を演じることになっていた。
プログラムを見ると、劇の原作者はT先生の名前になっていて、T先生が独自に書いた脚本であることが分かり、
「さすが国語の先生。劇の脚本まで書けるんだ!」
と少しはT先生を見直したが、実際に劇が始まってみるとその内容が謎だった。
「環境破壊をする人間たちを始末するために、虫から進化したミュータントたちが町中の人間たちを捕らえ、地下のアジトに幽閉する。
それに気付いた主人公の少年少女たちが町の人たちを助けに行く」
という話で、何か内容が稚拙で物語の展開も唐突なものが多く、子供が考えた劇みたいな脚本だった。
捕まっているシーンでは、人間たちがロープで縛られていた。
しかも、縛られているように見えるフェイクなどでなく、後ろ手縛りで胸縄のようなものもされているリアルな縛り方だった。
さらに、捕まっている人間役はなぜか女子生徒が多い!
女子生徒たちは私服姿だったり制服姿だったり様々だが、体にきつくロープが食い込んでいるため、胸の膨らみが強調されるような格好だった。
途中、囚われた人間たちが虫たちと対峙するために、縛られたまま立ち上がり抵抗したり、虫たちに反撃され倒れるシーンとかもある。
女子生徒が倒れるシーンとか、縛られたまま床に倒れているシーンなどは、別の意味で興奮させるものもあったが。
捕まっているシーンを再現するなら、例えば牢屋に入れるとか、虫たちの監視下で働かされているとか、いくらでも表現の仕方はありそうなのに。
まさかと思うけど、T先生の趣味でこのような脚本にしたのではと勘繰ってしまった。
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また、あるとき俺は部活が終わって帰ろうとしていると廊下で同じ学年のテニス部女子のほぼ全員がシクシクと泣いていた。
近くにいたテニス部の男子生徒に何があったのか聞いてみると、
「気にするな!」
と強めに言われたので、俺はその場を後にした。
あとになって分かったことだが、その日の部活中テニス部の女子たちはT先生に生徒相談室に呼び出されて、セクハラのような指導を受けたという。
例えば
「お前ら、試合に負けた責任を取る気があるならユニフォームを脱げ!」
と言って、女子全員を下着姿にしたそうだ。
どうしても脱ごうとしない女子には、T先生が無理矢理ジャージや上着などを脱がしたらしい。
T先生は女子全員を半裸にしたあと、しばらく女子たちを眺めていたそうだ。
その時点で女子の半分以上はシクシクと泣いていた。
それでも、T先生は容赦なく女子たちの下着や体のラインを見ていた。
その目は、明らかにいやらしい目だったという。
そのあと、T先生はカメラで
「お前らの懺悔の様子を証拠に残しておく。」
と言って、女子たちの下着姿をカメラで一人ずつ収めていったそうだ。
そして生徒相談室をあとにしたT先生は、何事もなかったように外で練習している男子部員の指導に加わったそうだ。
女子たちは、生徒相談室でショックで放心状態のまま動けず、服を着て出てきたばかりだったそうだ。
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3学期になってもT先生の懲罰的な指導は留まることを知らず、宿題をやらない生徒はかなり減ったがそれでもときどき出し忘れてしまう生徒もなかにはいた。
あるとき、俺の好きな女の子である亜沙子(仮名)が国語の授業のあとに宿題ノートを出し忘れたことがあった。
亜沙子は真面目で成績優秀な女の子で宿題を忘れることなどまずない子だったが、このときはやってあるはずのノートを提出し忘れたらしい。
休み時間にそのことに気づいた亜沙子はかなり不安そうにしていて、周りの女子は「大丈夫だよ」と元気づけていた。
そして放課後に、T先生と話すためにノートを持って職員室に向かう亜沙子。
俺は好きな女の子が不安そうにしていることにいてもたってもいられなかった。
そしてこっそりつけていった。
職員室の中はガヤガヤして聞こえなかったが、亜沙子がT先生に何か言われているのが見えた。
そしてT先生ともに職員室から出てくる亜沙子。
2人は例の生徒相談室に行くようだった。
そして生徒相談室に2人が入り扉が閉まった。
おそらくここで、宿題のやり直しか説教話でもされているのだろう。
女子だから空気椅子とかはなさそうだが、T先生だったらやりかねない。
どんな目に遭っているんだろうと思いながら物陰から見ていると、しばらくしてT先生だけが出てきた。
T先生は職員室に向かい、なかなか戻って来なかった。
俺は亜沙子が今どうしているのか気になって仕方なくなり、生徒相談室に入ってみることにした。
生徒相談室の扉を開けると、そこには亜沙子が一人でいた。
何と亜沙子は麻縄のようなもので縛られていた。
後ろ手縛りで胸の周りも縛られて椅子に座っていた。制服のブレザーは脱いでいて、上半身ブラウス姿だった。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫。30分こうしてれば帰れるから・・」
「え?でも・・」
俺は縛られている亜沙子の姿を見た。
それは不謹慎にもそそる光景だった。
後ろ手首は厳重に縛られ、胸の上にかかっている縄と割と目立つ胸の膨らみ、綺麗な生足とスカートやソックスなど。
俺は、亜沙子の縛られている姿にドキドキしながらも
「ほどこうか?」
と聞いたが、
「やめて!そんなことしたら帰れなくなっちゃう。30分我慢すればそれでいいから。」
俺は縛られている亜沙子をしばらく見ていた。
目の前で縛られている好きな女の子がいるのに何もできないという・・。
しばらく亜沙子を眺めたあと、俺は生徒相談室をあとにした。
亜沙子の言うように30分くらい経つとT先生が戻ってきて亜沙子は解放された。
亜沙子にこっそり聞いてみると、触られたりはしなかったけど亜沙子のあの姿を写真で撮られたりしたという。
・・・
そんなこんなで3学期が終わり、修了式が終わったあと1年生の最後の学年集会。
そのとき、T先生からお別れの挨拶があった。
T先生は感慨深くしんみりと話した。
実は、去年から産休に入っている女性の先生の代替としてT先生が赴任したのであり、産休の先生が4月から戻ってくるため、T先生は今日でお別れだそうだ。
なんだかんだあっても、T先生がいなくなるのは寂しく感じることもあり、テニス部の子の中には泣いたりする子もいた。
いろいろあったけど、T先生はやっぱり生徒思いのいい先生だったなって思ったりした。
・・・
それから9年後。
中学校の数学の教師を目指している俺は、教育実習生として母校の中学校に戻ってきた。
当時の先生は大部分が異動していて、知っている先生が今は教頭先生になっていたり懐かしさとともにいろいろと感じるものがあった。
ある日、教育実習での研究授業のため遅くまで残っていた俺は、パソコンでいろいろなファイルを見ていた。そのなかで、T先生の名前が書かれたフォルダを見つけた。
「そういえば、T先生っていたっけな。」
って思いながらも、T先生のフォルダの中を見た。
フォルダには、「国語科指導法」や「現代文読解」「古典読解」などT先生が自分で調べたり、まとめた論文のようなものがたくさんあった。
T先生ってああ見えてもそれなりに勉強してたんだなって改めて思った。
T先生のフォルダに入っているものは授業で使うものというより、教員採用試験対策といった感じで、臨時講師を続けながらも教諭になるために努力してたんだなってしみじみ思った。
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そして、「古典読解」のフォルダの中の、さらにいくつかのフォルダを開いて分かりづらいところにある「古文法演習」というフォルダなんだが、そこを開いたときとんでもないものを見つけた。
何とそこには、T先生が撮った女子生徒のあられもない姿が映っていた。
テニス部の女の子たちの下着姿、亜沙子の縛られている姿、学芸発表会の練習風景で生徒の縛られている姿など。
中には上半身のアップなどもあり明らかにいやらしい目的のものもあった。
そして、俺はそんなT先生に対しての怒りの感情がこみ上げてきた。
あのときは勇気がなかったけど、今なら言える!
俺はそのフォルダのことを教頭先生に話した。
校長先生もその場に来てちょっとした騒ぎになった。
T先生が今は教諭なのか講師なのか知らないが、そんな教師には一刻も早く辞めてほしいと思った俺はT先生がどうなったのか、翌日やさらにそのあとも教頭先生に聞いてみた。
するとT先生は俺たちの中学校の任期を終えたあと、他の学校に赴任することもなく退職したという。
もし、他県も含めどこかの学校で働いているなら何らかの処分を下すこともできるらしいが、学校そのものにいないし、さらに今どこに住んでいるかも分からないのでどうすることもできないそうだ。
そして、T先生のフォルダは全て削除された。
その数日後、教育実習を終えて大学の研究室で実習報告をした。
そのあと研究室で一人残っていた俺は、ノートパソコンで作業をしていた。
実は俺が持っているUSBメモリには、T先生のフォルダからこっそりコピーした画像が収められていた。
そして誰もいなくなって数分後、俺はあのファイルを開き、近くにあったティッシュを手に取った。
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『バイオン(42歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
当コンテンツは、個人による創作実話(フィクション)作品とご理解の上鑑賞ください。当コンテンツには、犯罪的・倫理モラルに反する表現・タブー表現等が含まれる場合がありますが、飽くまでも表現上の誇張としてご理解ください。
いるいる!変な教師!