前編:初デートと告白
日曜日が来た。
その日、桜子は朝食をすませると2階の自室で慣れないメイクを始めた。
桜子は男の子とはじめてのデートのため、どのようにすればよいかかなり迷った。
一通りメイクが終わると、最近買ったお気に入りのワンピースを着て、髪をセットした。
腰あたりまである長い髪を綺麗に整えるのは思っていたより時間がかかった。
「これでよしっと!。」
桜子は鏡で全身を見た。
ワンピースを着ると胸のふくらみが強調されて見える。
男性目線ではそれがいいのかもしれないが、桜子にとって大きめの胸はややコンプレックスでもあった。
そして桜子が待ち合わせ場所につくと駐輪場のある方から博正がやってきたのが見えた。
博正は自転車で急いで来たのか汗をかいていた。
「細野くん!」
桜子が呼ぶと、博正は桜子の方に来た。
博正は少し驚いたように桜子を見た。桜子は普段の制服姿でも十分可愛いが、今日の姿はそれ以上に魅力的だった。
可愛らしいベージュのワンピース、腰あたりまである長い黒髪、白い綺麗な脚、大人を感じさせるボリュームのある胸、そして彼女の魅力を一層引き出すようなメイク・・。
博正は、桜子に見とれていた。
「どうしたの?細野くん。私の格好、変かな?」
「いや!そんなことない・・・。」
桜子は笑いながら、
「じゃあ、行こうか・・・。」
二人はバスに乗って映画館のあるショッピングモールに向かった。
ショッピングモールの最上階にシアターがある。シアターのあるフロアは、他のフロアとは違い近未来的な造りでまるでどこかのテーマパークのようだった。
「細野くん。生徒手帳を持ってきたよね?」
「あ、うん。持って来たよ。」
「良かった。」
桜子は博正の生徒手帳に貼ってある写真を見ながら、
「えーこれ、細野くん?この写り方もったいないな。」
「うん、僕って写真撮るの苦手なんだよね。」
桜子は博正の写真をじっと見ていた。しばらくして博正は、
「山倉さんの生徒手帳、見せてもらっていいかな。」
「うん、いいよ。」
桜子は、生徒手帳を博正に渡した。
「へぇ、すごい。綺麗だね。」
「いや、大したことないよ。」
そこには、ポニーテールに髪を結んだ桜子の写真があったが、ストレートのときとはちがった可愛らしさがあった。
やはり桜子のような可愛い子だとどんな髪型にしても似合うし、どんな写真をとっても魅力が衰えることはないのかなと感じた。
そして奥に進むと広いシアターがあった。
真ん中より少し前あたりの列の中央のあたりの席に移動した。
そして中央の通路側に桜子、その隣に博正が座ることにした。
シアターは思っていたほど混んではいなかった。
映画が終わって桜子は、
「面白かったね!」
「そうだね。」
「このあと、ご飯どうする?」
博正は困った顔で、
「え、あ・・どうしようかな?」
桜子は、そんな博正を見て微笑みながら
「私、いい店知ってるから案内するよ。」
「あ、うん。」
2人はショッピングセンターを歩いていた。
休日の昼間なのでカップルが多い。
(やっぱり可愛いよなぁ。山倉さん。)
途中ですれ違うどのカップルの女の子と比較しても、桜子が一番美人であると博正は確信していた。
それに対し博正は、どこかあか抜けない男子である。
博正は桜子と一緒に歩いているのが申し訳ないような気がした。
そして、桜子はイタリアンレストランの前で止まった。
「ここなんだけど、イタリア料理とかって好きかな?」
「うん、好きだよ。」
「よし、じゃぁ決まりだね!」
2人は中に入ると、レジのところに大学生くらいの若い女性の店員がたっていた。
桜子は
「2名ですけど・・」
「こちらへどうぞ!」
若い女性は2人をテーブル席に迎えた。
異性と2人で食事に行くのは、桜子にとっても博正にとっても初めてのため2人とも緊張していた。
桜子は気まずそうに黙ったまま博正の様子を見ていた。
(細野くんって、割とかわいい顔してるよなぁ・・。)
桜子は博正のことをイケメンというよりは可愛い男の子だと感じていて、優しそうな雰囲気や誠実さに惹かれていた。
(どうしよう、やっぱり、告白しようかな・・・。でも、どのタイミングで?)
桜子はしばらく考えていた。
しばらくすると、パスタのセットが運ばれてきた。
テーブルに置かれたのはスープパスタだった。
桜子はそれをみてもっと食べやすそうなものを選んだほうがよかったかなと後悔した。
なるべく音を立てずにゆっくり食べるようにしたが、博正に見られていると思うと緊張した。
博正の場合は、食べ方が特別きれいというわけではなかったが悪くはなかった。桜子は小さいころから食べ方のことなどで両親に注意されることが少なくなかった上に、パスタの汁は思っていたよりはねやすく、冷や汗をかきながら食べていた。
食事が終わると、博正がレジで2人分の会計をはらい2人は店を出た。
桜子と博正はショッピングモールの少し離れたところにあるカラオケショップに向かった。
そのあと、カラオケで二人は2時間ほど楽しんだ。
デートの帰り道、駅の改札の近くで博正は桜子に声をかけた。
「・・山倉さん。」
「どうしたの。細野くん?」
桜子は不思議そうに博正をみた。
「・・・いや、どうしても言わないといけないことがあって。」
桜子は何を言われるのだろうと緊張していた。そして博正は、
「・・・山倉さん。きみのこと、好きなんだ。・・・付き合ってくれないかな・・。」
その瞬間、桜子は時間が止まったように感じた。嬉しいとも悲しいとも感じない不思議な瞬間だった。
「・・・細野くん・・・私、何て言えばいいのか・・・。」
「・・・・大丈夫だよ、山倉さん・・・。」
「・・・・ここじゃ話しづらいから一緒に来てくれる?」
・・・博正は期待と不安の入り混じった感覚だった。
北口広場の噴水の前に2人が腰かけると、桜子は緊張しながら
「・・・ゆっくり話そうか。細野くん。」
博正は桜子がどんなことを言っても受け入れるつもりだった。
桜子は真剣な目で博正のことを見て、
「私も細野くんのこと好き・・」
その直後、博正も頭が真っ白になった。
博正は黙ったまま声が出なかった。すると、桜子は
「だから、私もそういう関係になれたらいいなって思ってたんだ。」
「本当に?」
博正は、嬉しさの頂点だった。
だが桜子は思いつめたようなまなざしで
「でも私と付き合うには、ひとつだけ聞いてほしいことがあるの。細野くんがそれを受け入れられるかどうかで今後どうするか決まるんだけど。」
「それは?」
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博正は真剣な顔で桜子を見た。
「私、実はSM趣味があって、男の人を支配する願望があって、簡単にいうとSなんだよ。」
博正は、予想外の言葉に困惑した。
だが、続けて桜子は
「・・・・だから、私と付き合うとしたら細野くんにはMになって欲しい。」
博正は、桜子の言っていることの何が何だかわからず混乱した。
「え・・・でも、僕そういうの全然分かんないし。」
そういうと、今まで重い雰囲気だった桜子が急にハイテンションになった。
「大丈夫!私ね、細野くん見てて分かったんだけど、細野くんはハッキリ言ってドMだよ!だから、これから頑張ればいいよ。分からない事は私が教えるから。」
博正は、しばらく考えた。
今まで大好きだった女の子がそのような趣味をもっていたことは、正直ショックだった。
だが別の考え方もうまれた。好きな女の子に支配されるのも悪くないと・・。
「・・・いや、むしろOKだよ。」
「本当に!よろしくね。」
桜子と博正は強く手を握った。
つづく
–END–
『あしはら(43歳・♂)』さんからの投稿です。
ありがとうございます。
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