同じ大学の友達の彼の家に、僕がよく遊びをかねてたずねていくのは、彼に会うことの外にあと一つ目的があったからです。
友達はいま、両親と3人で暮らしています。3つ上の姉は家を出て独り暮らしをしているので、家には彼を含めた3人だけです。
僕はこれまで彼の父親には合ったことがなく、前にちらと友達が、父は会社の出張でよく海外にでかけているといっているのを聞いたことがあります。
母親はいつもいて、僕が家にいくと必ずといっていいほど顔を出しては、よく話しかけてきました。きれいな人で、学生時代水泳の選手だっだったとかで、いまでも体はすらりとして、胸もよくもりあがり、腰もまた豊に張りだしていました。
以前、庭で飼い犬の世話を彼女がしているとき、スカート姿でしゃがみこんで犬の毛並みをブラシでそろえていました。窓を透して部屋にいた僕の目に、彼女のスカートの中がまるみえになりました。犬に気をとられて彼女の方は僕がみていることがわからない様子です。僕はそのとき、折り曲げた膝の間にのぞいた白いパンツに、ふと欲情を覚えてしまったのでした。家に帰り、一人になってからもまだ、ちらちらとその時の光景が蘇っては、僕を悩ましい気持ちにさせるのでした。
そして今日、僕は彼の家にやってきました。あまりに行きたがるので、彼のほうがなんだか煙たがったりしましたが、家に行くと母親が嬉しそうに迎え入れてくれるので、彼も何も言えなかったのです。
「おまえ、俺の母さんに気があるんじゃないか」
冗談まじりに友達から言われて、僕は内心どきっとなったものです。
その日彼は昼から用事で1時間ほど家を空けるといいだし、おまえもいっしょに出るかとききました。僕が考えこんでいると、それをキッチンで聞いていた母親が、「家で待っていればいいじゃない」の一言で、僕はそうすることにきめました。本心はもちろんそうしたかったのですが、友達の手前、一応は迷ってみせたのでした。
彼が出て行き、僕が部屋で一人いると、彼女がコーヒーとお菓子をもってやってきました。彼女はそれをお膳の上に置くと、僕のすぐまえに座りこみました。
彼女と二人だけになると、なんだか僕は緊張してまともに言葉が出てこなくて、そわそわしながらお菓子に手をのばしたり、コーヒーに口をつけたりしていました。
「あなたが息子と同い年とは、とても思えないわ。息子よりずっと大人びているし、そのうえずっと男臭いもの」
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はじめて聞く彼女の言葉でした。僕は、どう答えていいのかわからないまま、またお菓子に手をつけました。
僕もまた、これまで口にしなかった彼女のことを喋ろうとしましたが、まさかあのときバンツが見えましたともいえずに、頭をかきました。
しかし、これだけはどうしてもいいたかったので、しばらく迷ったあげく、やがて意を決して口を開きました。
「お母さんて、可愛らしいですね」
「あら、そう」
「僕いつも、彼が羨ましくてならないんです。なぜって、お母さんといつもいっしょにいられるんだから」
「私もあなたのような息子がいてくれたらと思うわ。どこかにでかけるのもいっしょ、ちょっとカフェに二人にでかけたり、お風呂にいっしょに入ったり………」
「え、あいつ、いまでもそんなことしているのですか」
「冗談よ。でも、あなたとなら、本当に入ってみたいような気がするわ」
急に真顔になる彼女をみて、僕の胸はぞくりとおののきました。
手を伸ばせば、つい目の前に、彼女の顔がありました。いつも彼女がそばにくるとかすかに匂う上品な香水の匂いがいま、ひときわ強く僕の鼻をかすめました。
ふとみると、彼女が目をつむってじっとしています。僕はそのとき、彼女が僕の胸のうちをみぬいて、彼がもどってくる間、僕に自由な時間をあたえてくれたことを悟りました。今を逃したらもはや二度とこの機会はやってこないでしょう。
僕は彼女の顔に手をのばし、彼女の唇に自分の唇を押し当てました。彼女はそっと唇をひらいてくれ、僕の舌を導き入れてくれました。
僕はためらいがちに彼女の体を抱き寄せると、スカートの中に手をさしいれました。それから後のできごとは、こまぎれの映像をみるようで、興奮のために頭の中が真っ白になった僕は、なにがどうなったのか理解することもできなくなりました。太腿の間をすべりおりるパンツ、体毛にとりまかれた皮膚、襞と襞のあいだをうめる影、そして僕のものがそのなかに尽き入って行き、彼女が吐息をもらすまでのあいだが、あっというまにすぎさっていきました。
彼が帰ってきたとき、部屋には僕一人きりでいて、彼女は庭で犬を相手にしていました。
「じゃ、帰るから」
僕が言うと、彼は庭のほうをうかがいました。いつもなら見送りにくるはずの母が、なぜか今日にかぎって出てきません。
「母さん」
と彼がよぶのを、いいからと僕は手をふってさえぎり、家をあとにしました。肩にかけた僕のカバンの中には、あのとき彼女から脱がしたパンツが入っていました。二度ともどることのない幸せな時間の、証拠の品とおもって僕はもちかえったのです。そしてあのとき、庭でいつものようにしゃがみこんで犬をなでていた彼女のスカートの中の、膝の奥が黒いもので覆われていたのを知っているののもまた、僕一人でした。
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