裏山の公園で、僕は毎朝空手着を身にまとい、突き蹴りの稽古を日課にしていました。
五時という時刻、ようやく東の空が白みはじめたばかりで、むろん公園のどこにも人影はありませんでした。
公園内には、ウサギやシカの檻がありますが、かれら動物たちもいまは小屋の中でよく眠っていることでしょう。
こんな早朝だからこそ、僕は誰の目も気にすることなく、一心に稽古ができるのでした。ときおり、勢いあまって気合を発することもありました。
今朝はとくに気合が入った稽古ができて、一時間の練習が終わったときには全身、気持ちのいい汗でびっしょりになっていました。
僕は上着を脱いで上半身裸になりました。まだ五月、火照った体から汗が蒸気となってたちのぼるのがわかりました。
ふいに背後で人の気配がして、振り返るとそこに、トイプードルを連れた女性が立っていました。
「ごめんなさい。おどろかしちゃって」
「かまいませんよ。犬の散歩ですか」
「そうなの、いつもは別のコースなんだけど、気分をかえってこちらにきたら、あなたがみえて。空手ですの?」
「はい。まだ初段ですが」
「りっぱじゃないの」
彼女は犬がひっぱるのも忘れて、僕の体に見とれていました。
「やっぱり、鍛え上げた体は見事ね」
「いえいえ、まだまだです」
「ちょっと一回、エイヤッてやってみせてよ」
おやすい御用とばかり、僕は上段突きと前蹴りを披露しました。
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「すてき」
また犬が引っ張ったので、彼女はしょうことなしに犬の鎖にひっぱられて、繁みの向うに消えていきました。
僕がタオルで汗をふきおえ、公園から出ようとしたそのときでした。向こうの方でキャアというさっきの女性らしい悲鳴がきこえました。急いで僕がかけつけると、やっぱりさっきの女性が怯えたような顔で立つくしています。
「いま、なんか変な男が、木立のなかからのぞいていたの」
僕はその木立に飛び込んでいきました。
「誰もいないようですが」
「あなたをみて、きっと逃げたんだわ。ああ怖かった」
と彼女は僕の空手着の上からしがみついてきました。
僕は彼女の肩を優しく抱きしめました。向こうの草むらに、鎖をひきずるトイプードルがみえました。
30分後僕は、どうしてもという彼女の願いにまけて、彼女の住いのあるマンションに入っていました。
「どうぞ、シャワーつかってください」
僕も汗臭いのが気になっていたので、浴室に行き、シャワーを浴びていると、彼女がいきなり全裸ではいってきました。
「あ」
何も言わせず彼女は、僕に強くだきついてきました。
「はじめて公園であなたを見たとき、私、こうなることを予測していたの」
その言葉から、変な男というのは彼女の作り話だったのではと疑いいましたが、もうこうなったら、作り話でもなんでも僕にとってはどうでもよかったのでした。
僕は彼女の体を自分より高くもちあげました。彼女は僕に支えられたままあしをひろげると、僕の腰にからみつかせてきました。そうして僕の下腹部と彼女のそれがぴったり合ったところで、僕は彼女の体をおろしました。とたんに彼女の背中がそりかえり、その口から熱い吐息がもれました。
彼女はなおもあしをつよく巻きつけて、自分の重みで深く、深く僕のものを体の奥に誘いいれました。その口からもれでた喘ぎ声が、ながく尾を引き終わったとき、彼女の肉体は僕の上で力尽きたようにぐったりとなっていました。
浴室のガラス扉のむこうから、中にはいりたがっているのかトイプードルの茶色い影が、チョコチョコと動き回っているのがみえました。
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