寝とられた話.３

佳澄が来てから３日が過ぎた。俺の生活スタイルは、日中は出勤→仕事が終わると佳澄と過ごす。遊びに行ったり部屋でのんびり過ごしたり。といった感じ。

佳澄は俺が仕事の間は掃除や洗濯などの家事をしたり、空いた時間は近所の商店街を散策したりと専業主婦のような過ごし方をしているようだ。

将来結婚したらこんな感じかなと考えると、なんだか新鮮な毎日だ。

４日目の夜、仕事から帰るとキッチンに浄水器のようなものが取り付けられていた。
発注した覚えもない…。
佳澄に聞くと昼間に訪問販売の業者が訪れ、取り付けて行ったという。
浄水器のパンフレットを手にした佳澄が言うには、

「インターフォンが鳴ってドアを開けたら浄水器のセールスマンだった。なかなか帰ってくれなくて困ってたら、モニターだけでもやってくれないかって。お金はかからないから取り付けさせてくれないかって言い出して…。１週間後に引き取りにくるからアンケートを頼めないかって。無料だし、モニター実績の成績だけでも挙げないとクビになる。何とか協力してくださいって言われて……。」

どうやら断りきれずにモニターを引き受けたらしい。知らない人間を家にあげるなんて！と思ったが、俺たちの地元ではこの手のしつこい訪問販売はあまりない。そう考えると田舎育ちの佳澄が押しきられても仕方ないように思えた。

翌日、会社の食堂でＭ田と世間話をしていると先日Ｍ田の部屋にも訪問販売業者がきたとのことだった。Ｍ田は相手にしなかったらしいのだが、なんだか怪しげな雰囲気のオッサンだったという。

早速社名をネットで検索してもヒットせず、Ｍ田の言うように怪しげに感じた。サンプルを取り付け、「モニターは無料」と謳っておいて別途使用料なんかを請求してきたら厄介だな思い、仕事の休憩時に製品パンフレットに記してあった会社に電話をしてみた。

Ｍ田いわく怪しげなオッサン…実際に訪問してきた担当者Ｔと話をした。

Ｔにはモニターをやめるので製品を引き取りに来てもらいたい。アンケートが必要なら今日まで使用した感想を書く。ということを伝えると予想に反して、

「いや～、ご主人様のいらっしゃらないときに勝手に話を進めてしまって申し訳ありません。早速引き取りに参ります。」

と意外にも腰の低い対応。念のため、自分も立ち会える夜間の方が都合がよいことを伝えると、Ｔはあっさりと了承した。俺の帰宅後に浄水器を引き取りにくることとなった。

怪しいと思ったが、思い過ごしだったのか…と思わせるほど、すぐに相手は引き下がった。

その日は仕事が終わると真っ直ぐに帰路についた。
宿舎の部屋に帰り着くと、すでに浄水器はなくなっていた。

佳澄に担当者Ｔとのやり取りを話すと、俺が会社でＴとやりとりをした直後にＴが浄水器を引き取りに来たらしい。

俺と約束をしていた時間の都合がつかなくなり、調度近くに来る便があったから回収したらしい。俺に連絡しようにも俺の連絡先がわからなかったので、寄らせてもらったとのことだった。

佳澄によると、Ｔからの料金の請求などは全くなく、適当にアンケートを記入したらあっさりと帰ったという。

Ｔの勝手な予定変更には不満だったが、料金の請求などが無ければ結果としてそれでいい。

佳澄には次からは訪問販売などが来てもドアを開けるなと言い含めて、この件は終結した。

この時点で俺の中では終結したはずだった……。

続く。

–To Be Continued–

『名無しさん(年齢30歳・♂)』さんからの投稿です。
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