高校生カップルの長い夏4

（前回、誘拐された桜子を助けようと、監禁場所を突き止めた博正と舞歌だったが。舞歌も桜子とともに忽然と姿を消してしまい・・・
（詳細は「高校生カップルの長い夏3」を参照」））

・・

山道を走るワンボックスカー。

運転席に座る男は、慣れた手つきで車を飛ばしていた。

（舞歌！舞歌！！）

桜子は心配そうに、同じく後部座席に座らされている舞歌を見ていた。

桜子は倉庫の中のまま後ろ手首や胸の周りを縛られ猿轡をされていた。

舞歌も手を後ろで縛られているものの、気を失っているせいかそれ以外は拘束されていなかった。

「桜子さん。言ったでしょう？僕からは逃げられないって！」

後部座席には古川もいて、桜子や舞歌を監視するように見ていた。

桜子は懇願するような目で古川を見たが、古川は冷たく桜子たちを見ていた。

車はどんどん静岡市の北の奥へと進んでいた。

そして、車は山の中の大きな建物の前まで来た。

「ついたぞ。」

運転席の男が言うと、桜子は古川に誘導され車から降りた。

その直後、車の扉が自動的に閉まり舞歌を乗せた車が走り去ってしまった。

舞歌も一緒だと思っていた桜子は慌てたが、

「舞歌さんのことは、あの人に任せてあります。悪いようにはしませんから！」

桜子は古川のいうことなど信じられず、舞歌の身を案ぜずにはいられなかった。

目の前には、ペンションのような綺麗な建物があった。

古川は桜子を歩かせようとしていたが、縛られているとはいえ桜子はその場に留まり抵抗していた。

すると古川は

「桜子さん。逃げようとしても無駄です。ここは近くに何もないし、このまま山から脱出するなんて不可能です。冷静に考えてください。」

桜子はしばらく踏み留まったものの、そのうち古川に従って歩き始めた。

古川はポケットから鍵を取り出すと、ペンションを開けた。

中は皮肉にも、綺麗で豪華な造りのペンションだった。

誘拐ではない機会にここに連れて来て貰ったらどんなにいい気分だろう。

中には2階に向かう半円上の階段があったが、そちらではなく、一階の奥まったところに連れて行かれ、日当たりが悪く小さな窓のある奥の小部屋に連れて行かれた。

そして、桜子は猿轡を外された。

「ここは？」

「あなたは、今日からここで暮らすのです。」

「どういうこと？それに、舞歌をどうするつもりなの？」

「それは僕にも分かりません。あの人、大村さんが決めることです。それより、あなたは自分の心配をしなくていいんですか？」

桜子を見て不気味に笑う古川。

「何を企んでるの？」

落ちついた口調だが少し強気になる桜子。

すると古川は桜子を縛っているロープをほどいた。

勿論何かあるなというのはすぐに分かった。

桜子を縛っていたロープが床に落ちると、古川は桜子のブラウスのボタンを外しはじめた。

「何するの？」

その直後桜子は首元を掴まれた。

古川の手は桜子の首を絞め潰すくらいの力はありそうだった。

「黙って従ってください。」

そして古川にブラウスやキャミソールを脱がされ、スカートも脱がされる。

下着を取り上げられた桜子はあっという間に全裸にされてしまった。

「もう、やめてよ・・」

桜子は目に涙を浮かべながらうずくまり、体育座りで胸や陰部などを隠していた。

古川は桜子から取り上げた制服やキャミを袋に入れると部屋の外に出した。

部屋には桜子の体を隠せるものは何一つなかった。

そして、古川はまた綿ロープを取り出した。

「し、縛るの？？」

「勿論！」

「やめて、私裸だし、逃げないから！」

「あなたに拒否はできません。」

そして、古川に身体を掴まれ縛られてしまう桜子。

古川の手の力は強く、素手でも十分凶器だった。

そして、桜子はまた後ろ手に縛られ、胸縄、猿轡もされた。

フローリングの上に桜子を座らせると、桜子を眺める古川。

目の前には、大好きな女の子が素っ裸で縛られている。

古川は最高の気分だった！

そして、古川は桜子に襲いかかった。

（うー！うぅ！）

猿轡からの呻き声を聞きながら古川は桜子の乳房を何度も揉んでいた。

さらに手で桜子の陰部に手を入れたり。

裸で拘束されている桜子は古川のなすがままだった。

桜子は猿轡の中から悲鳴をあげたが

「叫んでも無駄ですよ！こんな山奥、誰も来ませんから。」

古川は容赦なく桜子の身体に触れていた。

そのあと古川は別のロープを取り出し、天井を見上げると天井には何のためか分からないがフックのようなものがあった。

古川は天井のフックにロープをかけると、ロープの端を桜子の後ろ手を縛っているロープに繋いだ。

そしてロープを引く古川。

「うっ！！」

桜子は天井からロープで強く引かれて吊るされていた。

足はつま先で立つような感じだった。

桜子は縛られて吊るされ苦しそうにしていたが、古川は嬉しそうに眺めていた。

目の前では大好きな可愛い女の子が縛られて吊るされている。

おっぱいや陰毛が丸出しで、綺麗な手は後ろで固く縛られていた。

古川はもう最高の気分だった。

古川はしばらく桜子を眺めていた。

裸で苦しそうに吊られている桜子はとても興奮する光景だった。

古川は乳房を揉んだり乳首に触れたりしていた。

さらに桜子の股間にも手を入れ、いやらしく撫でる古川。

古川は桜子を抱き、全身を弄っていた。

もう完全に玩具だった。

そのあと、古川は後ろに回り桜子の後ろ手に逸物を握らせた。

古川は後ろから桜子の乳房を揉んだり、乳首を指で弾いたり、陰部を弄ったりしていた。

桜子はひたすら古川のモノをしごいていた。

古川は桜子の手首のロープを握ったり、桜子の胸にかかるロープに触れたりしながら、縛られている女の感触を楽しんでいた。

桜子はなす術もなく、古川の逸物をピストンするだけだった。

そして、いくらも立たないうちに射精する古川。

そのあと、桜子は吊るされたまま放置された。

・・・

その頃、山道を進む一台の車では・・

どれくらい時間が経っただろうか。

舞歌は目を覚ますと、知らない車の後部座席で後ろ手に縛られていた。

「え？ここは？」

「大人しくしろ！」

運転席の方からは知らない男の声が。

車は奥まったところに進んで行った。

そして山の中の舗装されていない道をいくらか進んだところで車が止まった。

そして30代くらいの男がドアを開けた。

「降りろ！」

乱暴に車から出され、手を後ろに縛られたまま地面に腰を下ろしている舞歌。

男は立ったまま手にロープを持ち、首を絞めるかのような動きを見せた。

「え？まさか・・」

「そう、ここで死んでもらう・・」

怯える舞歌。

「やめて！殺さないで！」

「黙れ！お前が余計なことをしなければこうはならなかったんだ。」

そのとき舞歌は気づいてしまった。

舞歌の手首を縛っているロープ、うまく解けるかもしれないと。

舞歌はいちかばちか試してみた。

「待って！」

「何だ？」

「私の体、興味ない？」

男は一瞬動きが止まった。

だが

「命乞いのつもりか。そんなもん無駄だぞ？」

「助からないのは分かってる。でも私、気持ちいいことしたいの。」

そして地面の上で仰向けの舞歌は上半身を見せつけるように背筋を伸ばした。

男は舞歌の胸の膨らみを凝視した。

男は舞歌に近づき、絞首用のロープを一旦地面に置いた。

「お前がやれって言ったんだからな？いいんだな？」

「うん・・」

男は舞歌のブラウスのボタンを外すと、舞歌の下着姿に釘付けだった。

キャミソールからはみ出している舞歌の胸の谷間が男の目に映っていた。

「綺麗な体だな！」

「さわっていいよ！」

男は舞歌の胸を揉みはじめた。

「いい感触だな！」

「もっとさわって！私も気持ちいいの。」

舞歌は悩ましげに声を出す。

そのあと、男は舞歌のスカートの中にも手を伸ばした。

それと同時に舞歌はこっそりと両手首を動かし縄を解こうとしていた。

（できた！）

舞歌の手のロープが緩みいつでも抜けられる状態になった。

そして男が立ち上がり、ズボンのベルトを緩めた直後

「うわぁ！」

舞歌のキックに倒れる男。

女とは思えない強烈な一撃に怯みながらも

「てめぇ！ふざけやがって！」

さらに舞歌は手をロープからほどいて起き上がり、さらに蹴りを入れたあと、右手で男の顔を拳でパンチする。

男は口や鼻から血を流しながらも、逃げるように車の方に動いた。

舞歌もその場から道沿いに逃げ去ったが、

「待て！このクソ女が！！」

恐ろしい男の声が聞こえてふと振り返ると、男は車の中から刃渡りの長いナイフを取り出して舞歌を睨んでいた。

「え？？」

「もう騙されねぇぞ！ぶっ殺してやる！！」

死にものぐるいで追いかけてくる男。

舞歌も恐怖のあまり目に涙を浮かべながらもひたすら逃げる。

男は大声で凄みながらどこまでも追いかけてきた。

舞歌は山道がどこに続いているのか見当もつかないが、見通しの良い道だとそのうち捕まると思った舞歌はある程度進んだところで林の茂みの中に逃げた。

しばらくは男の声が聞こえたが、舞歌が林の奥に進むたびに声が遠ざかっていく。

舞歌は何回か転びながらもさらに進んでいった。

そしてかなり奥まで進むと、男の声や他の足音が全く聞こえなくなっていた。

少し安心した舞歌は、はだけたブラウスのボタンなどを直した。

このとき舞歌は右手に痛みがありうまく動かせないことに気付いた。

指は動かせるので折れているということはないだろうがうまく力が入らず、ボタンを直すのに時間がかかった。

また、ポケットをさわって改めて気づいたがスマホや財布がない。

さっきの男に拉致されたときに取り上げられたようだ。

舞歌は心細く感じながらもゆっくりと山の中を降りていった。

・・・

数十分後・・

ずっと縛られて吊るされるのはつらく、桜子は汗をかきながら悶えていた。

（はぁはぁ・・痛い・・）

桜子は息を荒くしながら悶えていた。

桜子を縛りあげているロープは少しも緩まず、むしろ桜子の身体を一層巻き上げている感じもした。

しばらくするとドアが開き、また古川が部屋に入ってきた。

そして桜子に近くに来ると吊っているロープを外した。

吊るされている状態から解放された桜子だが、裸で縛られたままだった。

そのあと古川は桜子の身体をしばらく弄り、奇妙な表情を浮かべていた。

そして、また桜子を小部屋に閉じ込めたまま去っていく古川。

足は自由だが、部屋は外側から鍵をかけられ、外に面した窓も小さく、まるで檻だった。

一糸纏わぬ裸にされ、後ろ手首を胸の周りを縛られ、猿轡をされている桜子は部屋を行ったり来たりしていた。

足だけは自由だがどうすることもできない。

ドアは開かないし、窓も逃げられない大きさだった。

ドアの前には鏡があり、鏡は非情にも桜子の淫らな姿を写していた。

桜子は思わず目を背けてしまった。

そのあとも桜子は何とか脱出できないか動いていたが、何もできなかった。

桜子は無駄だと分かってもずっと動き回っていた。

・・・

その頃、舞歌はどこまで進んでも同じような景色を歩いていた。

「もしかして遭難？」

舞歌は男から殺される恐怖とは別の不安に襲われた。

死にものぐるいで山を降りる舞歌。

山をさらに進んだところで、アスファルトの道が見えた。

少し安心したが、そこは舗装された道があるだけで左右どちらに行けば帰れるのかわからない。

舞歌は迷いながらも下りになっている道を選んだ。

下り道であれば麓につけるのかも知れないと思ったからだった。

・・・

一方、その頃・・

ドアが開き古川が部屋に入って来た。

桜子は古川が来るたびにビクッとなるほど、強い恐怖心と嫌悪感しかなかった。

それでいて彼女の生死は彼に握られているという極限の状態だ。

古川の手には何故か洗面器が握られていた。

用を足すための洗面器は元々置いてあるし、何だろうと見ると洗面器からは湯気が立っていた。

「桜子さん。ちょっと体を綺麗にしたくないですか？」

古川が何か企んでいるのかもしれないが、2日近くも風呂に入れず汗だらけの姿はすぐにでも何とかしたく、桜子は必死に首を縦に振った。

すると、古川は桜子のロープをほどいた。

ロープをほどかれた桜子は、胸や陰部を手で隠しながら古川を見ていた。

古川は湯気の立つ洗面器を桜子の近くに置き、同時にタオルも貸した。

桜子はタオルをお湯で濡らすと、絞って体を拭いた。

気持ちいい・・桜子はただ思った。

監禁されているとはいえこんなふうに体を拭けるのは、意外と同時に嬉しかった。

古川は桜子をニヤニヤと見ていたが、体を触られる訳でもなく気にしなかった。

そして体を拭き終わると、古川はビニール袋から菓子パンやサラダ、大きなペットボトルなどを用意した。

桜子は飢えたようにパンや飲み物にありついた。

古川は薄い笑いで桜子を見た。

こうなったら、どう見えるかなんてどうでもよかった。

そして食事が終わると、桜子は黙って手を後ろに回した。

桜子はもう抵抗する気力もないのと、食べ物や飲み物を与えてくれる奇妙な感謝の気持ちがあった。

古川は桜子の従順さに気付きながらも容赦なく桜子の手首や胸の周りを縛り、また部屋から出ていった。

・・・

その頃、舞歌は・・

舞歌が道路を進んでいく途中、すれ違う車、追い越す車が何台かあった。

迂闊に他の車に助けを求めてもどんな人が乗っているか分からない。

すれ違う車の中にはさっきの男が乗った車もあるかも知れない。

だが、山の中で遭難の恐怖に襲われ草などで足に傷がいくつかでき、靴や靴下が泥だらけの舞歌は山の中など歩きたくもなかった。

舞歌の足は左右とも痛み、歩くだけでも辛くなっていた。

辺りは少しずつ暗くなり、不安に襲われる舞歌。

・・・

その頃、桜子は・・

「いやぁぁ！」

縛られたまま、古川に身体を弄られていた。

古川も全裸になり、桜子の乳房を揉んだり、陰部に手を入れたりとやりたい放題だった。

今までも含めて一線は超えてないが、いつ古川に大事なものを奪われてもおかしくない状況だった。

古川はずっと斜めにそそり立った棒を桜子の身体のあちこちに密着されていた。

そして、古川は床にアヒル座りのように座っている桜子の口に斜めの棒を近づけた。

当然、ビクビクと震える桜子。

「桜子さん！ほら、これが大好きでしょう？」

そう言うと、桜子の頭を掴んで無理矢理逸物を咥えさせた。

桜子はむせて、思わず吐きそうになったが古川は気にせず桜子に咥えさせた。

そして、抵抗もできず古川のものを咥える桜子。

汚い訳ではないが、彼氏でもない男のモノ、まして嫌悪している男のモノを咥えるなんて屈辱だった。

「はぁはぁ！！すごくいいですよ！」

桜子は抵抗できず咥え続けた。

古川が顔を下げると桜子の胸や陰毛が丸見えで、さらに興奮する古川。

古川の陰部からは想像を絶するほどの快感が押し寄せて来た。

大好きな女の子が縛られて自分の逸物を咥えているという、最高のシチュエーションだった。

そして、しばらくすると古川は

「あぁっ！！」

桜子の口の中や一部外にも大量に射精した。

白濁液は桜子の口の中から、首、胸、太もも、脚など至るところに飛び散っていた。

「はぁはぁ、桜子さん、すごく良かったですよ！」

桜子は口の中が苦いまま、泣きそうな顔で何度も唾液をはきだしていた。

そのあと、古川はまた、お湯の入った洗面器を持ってきて、桜子のロープをほどいた。

桜子は必死にタオルで顔や口、身体を拭き、古川は汚れた床などを綺麗にしていた。

・・・

辺りはすっかり暗くなった。

舞歌は道路に出てから相当歩いたが一向に麓につかない。

舞歌はスマホや財布などがなく、足も痛くなってきて、あとどれくらい歩けるか分からない。

舞歌は途方に暮れながらとぼとぼ歩いていると、前から来る車のヘッドライトが舞歌を照らし、次の瞬間、車は止まった。

不安そうに車を見つめる舞歌。

暗いので車の色や形はよく分からない。

もしあの男の車だったとしても舞歌はもう逃げられない。

そして車の後部座席が開いた。

「舞歌！！舞歌だよね！」

「舞歌！良かった、無事で！」

聞き覚えのある女の子2人の声。

車の後部座席から飛び出して来たのは琴音と陽菜だった。

「琴音！陽菜！！」

3人は抱き合い、舞歌は静かに泣いた。

「舞歌、大変だったね。」

「もう大丈夫だよ！！」

「みんな、来てくれたんだね！」

車の助手席からは博正、運転席からは中年の綺麗な女性が出てきた。

博正は舞歌に

「舞歌ちゃん、ごめんな。俺が気をつけていればこんなことに！」

舞歌は「ううん、大丈夫だよ。ありがとね！」

運転していた女性は舞歌に

「舞歌ちゃん。ありがとう！桜子を助けようとしてくれたんでしょ？」

そう言われて舞歌はハッと気づいた。

「おばさん、もしかして桜子の・・」

「そう！桜子の母ですよ。」

桜子の母の由紀子がにこりと笑うと、どことなく桜子の面影があった。

傷の手当てや検査のために病院に運ばれる舞歌。

由紀子の運転する車が病院に到着すると、すでに舞歌の両親や兄も来ていた。

「舞歌！！良かった！！」

舞歌を強く抱く母の優香。

父の勇次郎、兄の翼も舞歌が戻って来たことを喜んだ。

一方、由紀子は舞歌の家族との再会を喜びながらも悲しそうな様子だった。

舞歌は幸い大きな怪我や感染症などはなく明日にも退院できそうだった。

その日の夜、舞歌は病室で優香と話していた。

「舞歌、どうしてあんなこと・・」

「だって、お母さん！！」

「桜子ちゃんが心配なのは分かるけど、あなたまで危険な目にあうことはなかったんじゃないの？」

「じゃあ、私が無事ならそれでいいの？桜子のこと見捨てれば良かったの？」

「そこまでは言ってないけど。」

「桜子のお母さんの顔見たでしょ？」

優香はしばらく黙ったあと、

「とにかくあなたは怪我しているんだし、しばらく大人しくしてなさい！」

優香が出て行くと、しばらくして翼が入ってきた。

「お兄ちゃん・・」

翼はニヤリとしながら

「お前って本当に向こう見ずだよな！」

舞歌は「ほっといてよ。」

翼は「でも、話を聞いて感動したよ。友達のために命をかける女なんてな。」

舞歌の兄の翼は大学1年生で中学からずっとバスケをやっている。

もともとは舞歌と同じように剣道や空手を習っていたが、舞歌が小学3年生の頃、剣道も空手も舞歌の方が強くなっていたために

「妹に負ける兄」

と揶揄され、武道をあきらめ球技に興味を持つようになった。

もちろん翼も運動能力はかなりのものだが、武道に関しては舞歌が並外れた素質を持っていた。

・・・

その頃、由紀子は日菜や琴音を車で送っていた。

「じゃあね！日菜」

「バイバイ！！」

そして、車の中には由紀子と琴音の二人。

琴音は「おばさん、ごめんなさい・・」

「え？どうしたの？」

「私のせいで桜子がこんなことになってしまって。」

由紀子は落ち着いた口調で

「何回も言ってるでしょ。あなたたちのせいじゃないよって。」

「もしかして、桜子がクラスでいろいろあったの気づいてました？」

「・・気づいてたよ。あの子は何も言わないけど、そういうことって昔からあったから。」

「でも私、何もできなかった・・」

「そんなことないと思うよ！今だって・・琴音ちゃん？」

由紀子がバックミラーに目をやると琴音はシクシクと泣いていた。

由紀子は道の端に車を止め、後ろを振り返る。

琴音は途切れ途切れの涙声で

「私・・1年の頃から桜子とずっと仲良くしてたのに、桜子に変な噂が流れてみんなと馴染めなくなったとき、私も同じ目にあうのが怖くて見て見ぬふりをしてたんです。桜子が最後の電話をかけたのは私じゃなくて舞歌だって・・私は桜子の力になれなかったんだなって・・」

琴音はただただ泣いていた。

それに対し由紀子は

「違うよ、琴音ちゃん！！桜子は琴音ちゃんに心配をかけさせたくなかったの。琴音ちゃんに相談をしたら、琴音ちゃんの優しさと責任感から余計心配させてしまうって。あの子はああいう状況でも大事な友達のことを思うような子なの。」

「おばさん？？」

「舞歌ちゃんに相談したのは、厳しいながらも公平に見てくれるのが舞歌ちゃんだから。舞歌ちゃんなら桜子を守れるし、守れない罪悪感を抱かせることもないから舞歌ちゃんに電話をしたんだよ！」

「でも、それって私じゃ力がなかったってことですよね？」

「それは琴音ちゃんが悪いことじゃないし、桜子のことをそれだけ思ってくれるだけで十分だよ！」

由紀子も少し涙ぐんでいるのも琴音には分かった。

娘が誘拐されて未だに帰ってなく一番つらいのは母、由紀子のはずなのに。

琴音は顔を上げ

「ありがとうございます。」

由紀子は微笑むと、琴音の家に向かって車を走らせた。

空には満月が出ていた。

・・・

その頃、小さな窓から同じ満月を見上げる桜子。

猿轡はされてなかったが、裸で縛られたままだった。

部屋にはベッドなどはなく、固いフローリングの上で寝るしかなかった。

そして、疲れてきた桜子はそのまま倒れるように床の上で横になった。

・・・

また朝が来て朝日が桜子を照らした。

そして目を覚ます桜子。

フローリングの上で裸で一晩過ごしたため体が痛く、ずっと縛られている手首も変な感じだった。

桜子は体を起こしその場に座った。

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「私、ずっとこのままなのかな・・」

古川という男に、裸で拘束されている私・・

もう絶望感と諦観の気持ちしかなくなっていた。

そのあと、しばらくすると古川が部屋に入ってきた。

「おはようございます。桜子さん。調子はどうですか？」

桜子は何も答えなかった。

無視しているというより、何も考えられない状態だった。

しばらく沈黙が流れたあと、

「桜子さん。もし、あなたが逃げないと約束してくれるならロープをほどいてあげますが、どうしますか？」

意外なことを言う古川。

「本当に？約束するよ！」

桜子は古川の前で初めて嬉しそうな顔を見せた。

「本当ですか？」

「今さら、嘘ついても仕方ないじゃん。」

「なら・・」

つづく

-END-

『あしはら（25歳・♂）』さんからの投稿です

ありがとうございます。

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