高一の今ぐらいの時期か、もう少し後だったかよく覚えてないが、当時もいきなり寒くなって、今と同じように鼻声で学校から帰るときの話。
昔と今が同じ状況なので、ちょっと懐かしくなって書いてみようかと思う。
クラスの役員(文化委員)だった俺は、その日文化祭のことで放課後に会議があったので、ルーム長(因みに男)と一緒にミーティングルームで、各クラスの代表と話し合い(ってゆーか伝達事項?)をした。
正直言って超つまらんかったよ。
生徒会長はシャバ僧だし、他の役員もみんなそんな感じ。
しかし、係りのため俺は絶対に出席しなきゃいけなかったし、なにより自分のバンドが出演(審査によって選考)できるかどうかの瀬戸際にいたからね。
まぁ~結果的には出演できたけど。
まっそんな話はどうでもいいんだけど。
当時は今と違って、土曜日も学校があった。
会議は土曜の午後にやってたんだよね。
その超つまらん会議は、永遠に続くのかと思うぐらいの長丁場だったよ。
去年の反省から始まり、各クラスの催しの希望、その準備期間はこれぐらいとか、あまり遅くまで作業をしないだとか。
あのねっ!?
もう小学生じゃないんだからその辺は自主性に任せるでいいんじゃね?
って言いたかったけど、そんなこと今年初めて文化祭に参加する一年坊が言えるわけがない。
仕方ないので途中からzzzましたね。
夢心地の中誰かが俺の体を揺さぶるんだよね。
んだよっ!?
って感じで超不機嫌に目を覚ますと、そこには可愛い副生徒会長がいるわけもなく、天パの我がクラスの委員長が睨んでました。
周りを見回すと、会長を始め皆様の冷た~い視線が。。。
俺はその場を取り繕うべく、意味もなく軽く会釈をした。
どうやら会議は終わりのようだ。
最後の締めの段階で俺は起こされたらしい。
っておいっ!外真っ暗じゃねぇ~かよ!
しかも俺、顔に寝跡ついてんじゃねぇ~かよっ!
「お前らいったい何時間話し合いしてたんだよ?」
って突っ込みたくなったけど、
「お前こそ何時間寝てたんだよ!?」
って返されると思って無言でした。
どんな話し合いしたのかなんて全く興味ないし、天パの委員長が聞いてるからいいだろって感じで部屋をあとにした。
田舎にある学校で、駅から学校までは徒歩で15~20分ぐらいかかる。
また、都会と違って電車の本数がかな~り少ない。
この時間帯は1時間に一本しかない上に更に、俺の乗り降りする駅は単線。
30分後に電車があるが、その電車は俺の降りる駅の2個手前までしかいかない。
その駅で降りても1人じゃすることないし、俺は更に30分後の電車に乗るしか選択肢はない。
普通駅前って言うと、何かしらあって(本屋とか)時間をつぶすことができるけど、先にも言ったけどなにせ田舎。
駅前にあるのはパチンコ屋と床屋、それに食堂ぐらいしかない。
ぶらぶら歩いてもしょうがないので俺はホームのベンチに座って待つことにした。
15分ぐらいたったかな?
なにやら改札口で声がしてきた。
俺は
「もしかして、知ってる奴がきたのか?」
って感じで、退屈で死にそうな現状が打破できると思って期待を込めて、改札口を凝視した。
しかし、現れたのは全く知らない人達だった。
しかも女。
ガッカリしながら腕を組み、寝の体勢へと入った(まだ寝るんかいっ!?って感じ?)。
改札を抜け、階段を渡りながらその女(先輩2人)が近づいてくるにつれ、声もよく聞こえだした。
何度か見たことのある先輩だったが、名前などは知らない。
2人の先輩はホームへの階段を下りながら話しをしていたが、俺に気づいたのか少し声のトーンを落として話しを続けていた。
少し離れたベンチに座った二人の先輩。
一人は色が白くて美人系(薄幸の美人とはまさにこの人に為にある言葉だと思った)。
もう一人はちょっと地黒な先輩。
こっちは目が大きく安達裕美に似ている。
ベンチに座っているのも飽きたので、俺はタバコを吸うために階段の裏側に移動した。
普段は帰り道の途中の原っぱで吸うんだけど、今日は仲間もいないし寄り道しないで駅へときた。
ホームで吸うのはこれで2度目。
しかし緊張する。
いくら死角になるとは言えちょっとドキドキしていたがどうしても我慢できなかったことと、二人の先輩から遠ざかりたかったので覚悟を決めスモーク。
一本目を吸い終わり、ぼーっとすること10分。
新しいタバコに火を点け2,3回吸ってたな?
「こらっ!」
背後から突然声をかけられた。
超びっくりしたよ!
心の臓が止まるかと思った!
人間本当に恐ろしい目にあった時って動けないもんだよ。
本当は走って逃げたかったんだけど、体が全く動かなかった。
あぁ~停学だぁ~(二度目の)と心臓をバックンボックン言わせながら尚もフリーズ状態な俺。
「ちょっとぉ~?なんでなんの反応もないのぉ~?つまんないの」
とちょっとすねた感じの女の人の声が。
学校の先生?
それともおせっかいな近所の人?
少し落ち着きを取り戻した俺は、顔さえ見られてなければ逃げることも可能とまだ振り向かずにいた。
以前、一回逃げことがあったから。
「ねぇ~ねぇ~?君、聞こえてる?君うちの学校の1年の子だよね?」
うちの学校の子?
もしかしてさっきの先輩?
「う”えっ?」
のどがカラカラでうまくしゃべれなくちょっと裏声で振り向きもせずに返事をしてしまった。
「あははぁ~。声裏返ってるよ~。なんかおかしんだけど」
「・・・(照れ)」
俺の後ろにあった気配が横へ移動したかと思うと、目の前に見慣れたスカートが。
あぁ~よかったぁ~先生じゃないよぉ~。
そう思った俺はそろそろと立ち上がりそのスカートの主の顔を見た。
やっぱりさっきの先輩だ。
しかも安達裕美の方。
今後、こっちの先輩は裕美、色白美人は由香って名前にします。
もちろん仮名。
なんでそうしたのか分からないが俺は軽く会釈をした(やっぱ先輩だから?)。
「ねぇ~君?同じ学校だよね?」
裕美が聞いた。
「あっはい・・・」
「ここで吸ってると危ないよぉ?」
「あっはい・・・」
って俺そんな返事ばっかだよ。
「ねぇ君、まだタバコ持ってる?」
「・・・?」
なんでそんな質問するのか相手の意図がよく分からなくて俺は無言。
「持ってたら二本欲しいんだけど?」
二本?
えっ!?
なに、もしかしてこの先輩達も吸うの?
いや、この地黒の先輩は吸っててもおかしくはないが、薄幸の美人の先輩も吸うの!?
えっ!?
マジで!?
なんかイメージ崩れるんですけど?
と勝手に妄想を膨らませてた俺はちょっとガッカリしながら、ポケットに入っているタバコの箱を取り出し、中を確認した。
まだ、7,8本あるな。
「あっはい、まだあるんでいいですよ」
そういいながらタバコを箱を差し出し、少し揺らしてタバコを箱から飛び出させた。
「ごめんね、ありがとう」
そういいながら、裕美はタバコを二本取り出した。
この先輩達はどこで吸うのかな~って考えていると、その場で火をつけ吸い始めた。
どうしていいのかわからない俺は、その場にアホみたいにぼーっと立っていた。
そうすると裕美が言った。
「ちょっと君、なんで立ってるの?目立つからしゃがんでよ」
「あっはい・・・」
相変わらずな返事をしながら俺はその場にしゃがんだ。
何をしていいのか分からない俺は、周りをきょろきょろ見回すことしかできなかった。
「ねぇ~今日はなんでこんなに遅いの?」
裕美が突然聞いてきた。
「あっいや~あの~、文化祭の役員会があって・・・」
「あっそうなんだ?君役員なの?」
「あっはい」
「ふぅ~ん、今日は一人で寂しいね?」
「えっ?」
一人って?
この先輩俺のこと知ってるの?
「だって、君たちいっつも大勢でつるんでるじゃん?」
「先輩、俺たちのこと知ってるんですか?」
「知ってるも何も、あんな大勢で行動してたら誰でも知ってるって!」
「あっ、はぁ~」
俺の返事にもちょっと変化が出てきた、一字だけどね。。。
「はっきり言って君たちちょっと怖いよ。」
自分たちでは意識してなかったけど、そう言われればそうだよな。
常時10人ぐらいで登下校してた。
周りから見れば確かに威圧感があるよな。
一年の中では俺たちのグループが、一番目立ってたし、勢力的にも一番大きかったし。
後に、2年生グループにしめられた。
(反撃がないと思って2年には好き勝手やられたよ)
ここまでの会話はすべて俺と裕美の会話である。
由香はその間、一切会話に参加してこない。
あぁ~なんて奥ゆかしいんだろ。
ますますポイントアップですよ。
そんな話しをしているうちに、タバコを吸い終わった。
どうせ暇だし、もう少し話したいと思っていたがどう会話を切り出せばいいのか分からない。
どうしよう?
あせりまくる俺の心情を察してるのか、先輩達もその場から動かない。
「えっ?俺たち怖いっすか?」
「十分怖いよぉ~。ねぇ~由香?」
「そうね」
由香さんの声初めて聞きましたぁ~。
顔に似合わずハスキーです。
正直いって超ど真ん中です。
顔、スタイルが好みなうえ声までも超好み。
俺ハスキーな声、超大好きなんですよ。
あぁ~由香さん結婚してください。
ってこれでもまだ言い足りないぐらいの衝撃が走った。
実際、この声聞いたとき背筋がぞくぞくしてちょっと小刻みに震えたもん。
「そんなんじゃ、女の子も寄ってこないよ?」
「そうじゃなくても寄ってこないっすよ」
俺は裕美の返事にちょっとすねたように返事をした。
「あれ?君、彼女いないの?」
「いないっすよ。少し前に振られました・・・」
振られたときは号泣したねぇ~。
「あはは。そうなんだ?可哀想にねぇ~」
ってちっともそう思ってない口調で裕美が言った。
「いや、先輩笑い事じゃないっすよ。俺ホント超悲しかったんすよ」
そういいながら俺は、タバコを取り出した。
自分ひとりで吸うわけにもいかないので、俺は箱を先輩方の方に差し出した。
「えっ?いいの?なんか悪いね」
そういいながら裕美がタバコを1本取り出した。
「ありがとう」
ちょっと笑いながら由香さんもタバコを取った。
由香さん超かわえぇ~!
調子に乗った俺は火をつけようとライターを差し出した。
裕美は
「おっ!サンキュー」
って感じで火をつけたが、由香さんは
「自分のがあるから」
って自分のライターで火をつけた。
がっくりですよ・・・
「なんで振られちゃったの?エッチなことでもしようとしたの?」
少し慣れたきたのか、くだけた質問を浴びせる裕美。
「ちっ違いますよ!そんなんじゃないっすよ!」
「分かった、分かった。そんなにムキになることないじゃん。かえって怪しいぞ?」
「先輩、ホント勘弁してくださいよ。そんなんじゃないでっすよ」
「じゃなんでよ?」
「いや・・・ちょっと・・・」
かっこ悪くて理由はいいたくなかった俺は言いよどんだ。
「言えないってことは、やっぱそうなんじゃないの?」
「いや、ホントそれは違いますよ」
ちっ、やけにしつこいな。
「じゃ、いっちゃいな」
「いや、先輩、その『じゃ』ってのが意味わからないんすけど」
「あはは~。そんなの気にしない気にしない」
「ちょっと、裕美もう止めなさいよ?後輩君困ってるじゃない。ごめんね?」
由香さんがこっちを見ながら言った。
キャッホー。
ぜんぜん迷惑じゃないっすよ。
由香さんが知りたいならなんでも答えますよ。
と心の中でつぶやく俺。
「由香ってばお気に入りには甘いよねぇ~?」
裕美は由香の方を意味ありげに見た。
なぬっ!?
お気に入り?
1000km離れた場所での会話でも聞き取れるよう俺は耳に全神経を集中させた。
「ちょっと~裕美~?後輩君本気にしちゃうじゃんねぇ~?」
がっくり・・・
耳に集中していた神経はちりぢりになり、元の場所に一目散に戻っていった。
やっぱそうだよね、人生そんなに甘くないよね。。。
裕美は由香さんに向かってなにか言いたそうであったが、由香さんの目をみてそれ以上は何も言わなかった。
少し場がしらけた。
一気にテンションが下がった気がした。
ほんの少し間を置き、裕美が言った。
「ところで君、名前なんていうの?」
「あっ、○○っす」
「いや、苗字だけじゃなくてフルネームで」
「○○ヒロユキ」
「だからヒロって呼ばれてるんだ?」
「えっ!?なんで知ってるんすか?」
「みんなでいつもバカ騒ぎしてるじゃん?それぐらい耳に入ってくるよ。ようやく君・・・じゃなくて、ヒロ君の名前が分かったよ」
ヒロ君て呼ばれてドキッとした。
女性に名前で呼ばれることなんて、彼女以外にいなかったから。
しかも同じ学校とは言え、今日始めて言葉を交わした先輩にそう呼ばれていい意味でショックを受けたよ。
かんか新鮮な感じがして、少しくすぐったかった。
「ちょっと、君、じゃなくてヒロ君待ってて?ねぇ由香?」
裕美は由香さんに声をかけ、俺から少し離れたところに移動してなにやら手帳を見ながら話しをしている。
そのうち由香さんが改札を抜け、外へといってしまった。
あぁ~由香さんいずこへ?
ちょっとがっかりしながら俺は裕美に聞いた。
「どこいったんですか?」
「ちょっと電話しにね」
「あっそうっすか」
ほっと胸をなでおろす。
「なに、帰ったかと思った?」
この女は読心術を心得ているエスパーか?
「いえ、別に」
「正直言えよこのぉ~。」
軽く肘鉄をしてくる裕美。
「イタっ。なにすんですか?」
大して痛くもないのに条件反射。
「だから正直言えよってこと。由香のこといいと思ってるんだろ?」
「いや、別・・・に・・・」
じどろもどろになる俺。
白状してるも同じジャン。
あたふたしながら、もしかしてこの先輩が恋のエンジェルになって橋渡ししてくれるの?って考えがちらっと頭をよぎった。
もう一突っ込みしてこい。
その時に俺の胸の内を言おう。
そう思って裕美の次の言葉と待っていた。
鼻息を荒くして待っていると由香さんが改札を抜けてきた。
一気にクールダウン。
「どうだった?」
裕美が由香さんに聞いた。
「うん、大丈夫だったよ」
一人意味が分からない俺は聞いた。
「えっ?なにが大丈夫だったんですか?」
「由香、今日バイトがあったんだよ。それを替わってもらうのが」
「あっそうなんすか。何か用事でもあるんすか?」
「う~ん、まぁ~用事というかね」
まっ別に俺には関係ないからどうでもいいだけどね。
そう思ってそろそろベンチに戻ろうと、立ち上がると裕美が言ってきた。
「ヒロ君はこのあと用事あるの?」
「いや、別に。家に帰るだけですよ」
この時なんでこんな質問するんだろ?ってことになんの疑問を感じてない俺は即答した。
「ちょっと私たちに付き合って欲しいんだけど?いい?」
はっ!?付き合って欲しいってなに?
「えっ!?」
「えっ!?ってなによ?用事ないんでしょ?」
「いや、ないっすけど、付き合うってどこにですか?」
「いいからいいから、ちょっと一緒に来て欲しいの」
「えっ?いや、いいからじゃなくて、どこ行くんすか?」
ちょっと不安になった俺は聞いた。
「変なとこに連れて行くんじゃないから安心してよ」
そんなこと言われても安心なんてできんよ。
学校の先生に知らない人に付いて言っちゃだめって言われてるし。
少し言葉を変えて俺は言った。
「いや、お母さんに知らない人についていっちゃダメって言われてるんで」
ちょっとウケを狙って言ってみた。
一瞬間をおき裕美が吹き出した。
「ぷっ!あははっは~、君は面白いなぁ~」
由香さんの方を見ると、由香さんもくすくすと笑っている。
あ~ん由香さぁ~ん、どこへでもついていきますよ~。
予想以上のウケにちょっと照れちゃったよ。
笑いが少しおさまった裕美が言った。
「ホント、怪しいとこじゃないから安心してよ。可愛い後輩を騙すようなことはしないよ。私たちを信じてよ?」
あんた一人なら信じないが、由香さんもいることだしまっいっかと思って返事をした。
「ホント、やばくないすっよね?信じていいんですよね?」
「大丈夫、大丈夫。君は何を心配してるんだい?」
「いや、実はおっかない先輩の呼び出しじゃないかと・・・」
「君、発想が面白いね?そうだとしてもこんな手の込んだことする?」
「いや・・・どうでしょう?・・・」
「ちょっと~、由香からもなにか言ってよ?さっきから私ばっかじゃん」
俺と裕美の視線が由香のほうに向いた。
「ホント心配することないよ。安心していいよ」
はぁ~い、由香さんがそう言うので間違いないでしょ~。
「あ、はぁ~」
思ってることと態度が裏腹な16歳の俺。
裕美が
「なにその態度の違いはっ!?」
って感じで俺の方を見た。
「すません」
って意味を込めて俺は少し頭を下げた。
途中経過・・・(略)
俺がいつも降りている駅より二つ手前の駅で3人は電車を降りた。
少しは拓けている駅前である。
デパートが駅の東西にある。
(これで拓けてるって表現する自分の田舎根性がいやです。。。)
先輩達が先を歩き、遅れないようにその後を子犬のようにつけていく俺。
由香さんって細いよなぁ~。
後ろから視姦しながら思った。
裕美も細いほうだが、由香さんと並ぶとガタイがよく見える。
贅沢を言うと、由香さんもう少しお尻が大きいほうがいいかなと思った。
駅前のロータリーの中の一つの停留場の前で先輩方が止まった。
「このバスに乗るから」
「あっはい」
バスで移動?
マジでどこ行くの?
さすがにもう我慢できない。
行き先が分からないといくら由香さんの言葉とはいえ不安。
「先輩、マジでどこ行くんすか?やっぱ俺不安なんすけど?」
裕美は由香さんのほうをちらっと見た。
てっきり裕美が答えると思っていたら由香さんが答えた。
「私んちだよ」
「?????」
はっ!?
今なんて言った?
私んち?
あたしんちじゃなくて?
ってそれは漫画だろ。
しかも当時そんな漫画ないし。
なんで由香さんの家へ?
ははぁ~ん、ピーンときましたよ俺は。
ずばり着替えですな。
これからどっかに行くのに制服じゃまずいと。
それで順番に着替えていくわけですな。
ふむふむ。
一人的外れな納得をする俺。
「家っすか?着替えか何かですか?」
「違うよ。まっそれもあるかな」
由香さんが答えた。
それも?
『も』ってなに?
他にも目的があるから『も』だよな。
お頭の弱い俺でもその言葉の意味は分かった。
そんな感じで10数分。
「次で降りるからね」
バスは結構混んでる。
お互いが引っ付きあってる中、裕美が言った。
他の乗客をかき分けるようにバスの降り口へと向かう3人。
いくらかと思い、ポッケを探りながら料金表示と整理券を見比べていると裕美が言った。
「いいよ、私たちが(乗車賃)出すから」
古い考え方の俺は、女性にお金を出してもらうことに抵抗があったので
「いや、自分で出しますからいっすよ」
と言った。
「いいから、遠慮しないの」
と言いつつ二人は、前へと進んで俺の分の料金も投入した。
なんか納得できん。
そう思っても今はどうすることもできない。
俺は整理券だけを投入口に投げ込んだ。
「ふぅ~」
軽く息を吐く裕美。
俺は小銭を握り締めたまま、裕美の方へと近づき手を差し出した。
なに?って感じで裕美が俺の方を見た。
「バス代」
ちょっとぶっきらぼうに俺は言った。
「だからいいって」
「いや、そういうわけにいかないっすから」
「無理に付き合ってもらってるんだもん、それぐらい私たちが出すよ」
「いや、でも、いくらそうでも女に金ださせるわけにいかないっすから」
「君は意外に硬いんだねぇ~。真面目なの?んなわけないか。タバコとか吸ってるしね」
「真面目とかそういんうんじゃないっすよ。いくら先輩とはいえ女に金を出させるわけにいかないっすよ。そんなことしてたらお父さんに怒られますから」
じゃっかんウケ狙いで俺はいった。
「きゃ~あっはは~!今度はお父さんなのっ!?一家総出ね。やっぱ君はおもろいよ」
えへへ、ちょっとうけた。
「そっかそっか。じゃ君がお父さんに怒られても困るから、バス代はもらっておくか」
裕美がすんなり折れてくれたので、場の雰囲気を乱すことなくその場はおさまった。
由香さんもさっきより笑ってくれてるし。
停留場(今もそう言うの?今はバスストップとかって言うのかな?)から由香さんの家までは結構な距離があった。
しかも由香さんちは高台にあったので坂道を登らなくてはいけなかった。
さっきと同じように子犬のように二人の後をついていく俺。
今度は裕美を視姦だ。
裕美は足がきれい。
細くもなく太くもなくちょうどいい太さ。
しかも少し地黒なので健康そうに見える。
由香さんが色白なので余計そう見えた。
今と違ってスカートが短くないので、膝から上は見えない。
しかも別に俺は足フェチじゃないのですぐに飽きた。
視姦も飽きた俺は周りの風景を見回しながら歩いていた。
周りを見回すと結構大きな家が多い。
しかもみんな新しく見える。
俺んち(社宅)とは大違いだ。
そんな感じで、自分の父親の甲斐性のなさを悲観しつつ歩くこと数分。
やっと目的地の由香さん宅へと到着。
道路から10段ぐらいある階段を二人は上っていった。
真下にいるとスカートの中が見えるかも?と思ったがばれたら恥ずかしいので少し離れたところでご主人様を待つハチ公のごとく待つ準備をする俺。
「ちょっと、なにしてるの?」
裕美が言った。
「えっ?なにって?先輩達着替えるんでしょ?」
「だからなに?」
心外そうに裕美が言った。
「いや、だからここで待ってますよ」
「確かに着替えはするけど、どこにも行かないよ?」
はっ?
ごめんなさい。
お馬鹿な俺はあなたの言ってる意味がわかりましぇ~ん。
「???」
アホみたいにぼーっとしている俺に裕美が言った。
「だから今日は、由香んちで語るんだよ」
はっ!?
由香さんちで語る?
えっ!?
なんか事情が飲み込めないんですけど。
語るってなんですか?
なにを語るんですか?
見ず知らずでもないが、今日初めて言葉を交わしたあなた達と。
「・・・」
固まる俺に由香さんが言った。
「今日(も)、うち誰もいないんだよね。遠慮することないよ。あがってよ」
裕美が笑顔を振りまきながら手招きをする。
おい、おい大丈夫かよ?
なんかおかしくないか?
いくら同じ学校とは言え初対面の男を家に誘うか?
今ならキャッチセールスとかねずみ講って疑うだろうけど、昔はそんなのなかった。
いや、あったかもしれないが俺の住んでいる地方にはそんなのはなかった(はず)。
ちょっと不安に思ったけど、バス代を払ってここまで来たんだし、女二人になら勝つ自信もあったので、俺は覚悟を決め階段を上っていった。
ちらっと上を見ると裕美のスカートの中が見えた。
って言っても膝の少し上が見えただけだけどね。
それでもちょっとドキッとしたね。
玄関を抜け(いい匂いがした)、二階にある由香さんの部屋へと。
ってゆーか由香さんちデカッ!
玄関も普通の家の2倍ぐらいはあった。
しかも吹き抜け。
俺の友達(っていってもお宅訪問したことのある友達)はみんな社宅だったし、持ち家の友達も一人か二人いたけどみんな普通の広さの玄関だったから、由香さんちの玄関の広さにはびっくりしたね。
二階へと行く階段も、一つ一つの階段の高さが低い。
それだけに階段としての距離が結構長くゆったりとしている。
階段を上りきると脇に大きな花柄の壷(花瓶かな?)があって、ドラマに出てくるハイソな家みたいだった。
ちらっと見る限り、二階には部屋が4室か5室ある模様。
一番奥から二番目が由香さんの部屋らしい。
まず由香さんが入って電気のスイッチを入れた。
蛍光灯と裸電球しか知らなかった俺はまたもやカルチャーショックっす。
部屋の真ん中に馬鹿でかいシーリングライトがあって、部屋の四隅と真ん中に埋め込み式の電球(?)があった。
はい?
ここって個人の家ですか?
ってぐらいショックを受けたね。
それと一番目立つのはこれまた馬鹿でかいベッドっす。
今でこそ(ラブホで)見慣れたキングサイズのベッドがどかんと鎮座していますよ。
しかもすぐ寝られる様にちょっとまくられてます。
普通、人を部屋に招待するとき
「ちょっと、ちらかってるから待っててね」
ってはにかみながら言うジョノカがいて、
「別に気にするなよ」
って強引に部屋に入ろうと男との間で萌え~なドラマが繰り広げられるもんだが、そのドラマは由香さんには当てはまらない。
だってぜんぜんきれいなんだもん。
きれいって言うか、生活感がない。
そりゃ高校生の女のらしい部屋ですよ。
定番のぬいぐるみはあります。
ベッドに2,3匹、部屋のコーナーのいすの上にも1,2匹います。
広告コード「444801」入力で6,000円分無料ポイントがもらえます
でもなんか違うんだよねぇ~。
どっかのモデルルームみたいな感じだね。
裕美は慣れたものでキングサイズのベッドへとダイブです。
それに続けと俺もダイブ。
なんてできるわけもなく、部屋の入り口でまたもやぼーっと。
「何してんのよ?座りなよ」
自分ちでもないのに裕美が言った。
「あっ、はい」
どこへ座っていいのか分からない俺は、入り口近くに座った。
「なんでそんな離れたとこに座ってるの?もっとこっちにおいでよ」
しつこいようだが、自分ちでもないくせに裕美が言った。
立膝の体勢でじりじりと部屋の中央へと移動する俺。
その間由香さんはクローゼットを開け、お召し物を物色中。
その場の雰囲気に呑まれちょっと上品な言い回しをする俺。
自分の分と、裕美の分の着替えをもって由香さんは部屋を出て行った。
少しして裕美が
「ちょっと待っててね」
と言い、これまた部屋を出て行った。
当コンテンツは、個人による創作実話(フィクション)作品とご理解の上鑑賞ください。当コンテンツには、犯罪的・倫理モラルに反する表現・タブー表現等が含まれる場合がありますが、飽くまでも表現上の誇張としてご理解ください。
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