前回の体験談はコチラ
その後、学校で友達と楽しそうに話すKを見て、なんだが悪いことをした気がしてきた。
周りの友達は処女、しかし自分は違う。
一足先に大人になってしまった、そんな疎外感を味わっているんじゃないかって思った。
Kに確かめた訳ではないが、俺はそう思っていた。
高校卒業後、今までとは全く違う生活が始まった。
日々目に映るもの、体験するがことが珍しくまた楽しかった。
俺は新しいおもちゃを買ってもらった子供みたいだった。
昔からあるおもちゃ(K)には徐々に興味が失せていった。
(Kのことをおもちゃって表現することは適切ではないと思いますが、他に適切な表現方法がないのでご容赦ください)
時間の経過とともにKとの連絡の間隔が徐々に空いてくる。
家にいることが殆どなかったので、Kから連絡が来ても俺はたいてい不在。
終いには母親に、
母「あんたいい加減にしなさいよ!いっつもいっつも電話もらって!悪いと思わないの!?(あんたが)いないって言うお母さんの身にもなってごらん!いないって言うたびに『何度も申し訳ありません』って申し訳なさそうに言う彼女が可哀相でしょ!がっかりした口調を聞くのはもうたくさん!」
って言われる始末だった。
母からの小言と伴にKから連絡があったことを聞くたびに、まだKの気持ちが俺にあるんだなっていう安心感が俺の自尊心をくすぐっていた。
付き合いも後半に差し掛かってくると、連絡は2週間に一度ぐらい、実際に会うのは月に1度ぐらいだったと思う。
たまにつながる電話で話しをする時も、Kは自分のことはあまり話しをせず、ひたすら俺のことを聞きたがる。
聞くといっても詮索するような感じではなく、共通の時間を過ごす事が少なくなり、俺の存在を遠くに感じている。
そんな不安をかき消すために、話しだけでも聞いて俺を身近に感じていたいそんな感じだった。
そう言えば、Kから「昨日は何していたの?」とか「誰と遊んでいたの?」
って詮索めいたことは聞かれたことがなかったな。
恋愛は追われるより追うほうがいい。
女性は愛するより愛されるほうが幸せになれる。
当時、そんな考えはしていなかったと思うが心の奥底で俺はそう感じていたと思う。
それと俺はKが自分のことを好きで、Kの方から別れ話はないだろうと思っていた。
多少ほっておいても大丈夫だろって思い上がりが、更に興味を失せさせる原因の一つとなっていた。
ここで誤解の無いように言っておきたいが、Kのことを嫌いになったわけではない。
ただ、今まで同じ学校に通っていてKには労せずして毎日学校で会えた。
しかし高校卒業後はそれぞれ違う学校へと通い、また家も遠かったため会うのがどうしてもおっくうになってくる。
俺は遠距離恋愛に最も適さない男だ、それは自覚している。
(遠距離といっても車で3、40分ぐらいの距離なんだが、それさえもめんどくさかった。)
そんな思いの中、身近に気になる子(S)が登場した。
結果は目に見えている。
俺はSに入れあげた。
Kと過ごす時間よりSと過ごす時間(二人っきりではないけど)の方がはるかに長い。
この子と付き合いたい。
なにが何でも手に入れたい。
(Sにちょっかいをかける男が他にいたことも、一層Sに入れあげる原因にもなっていた)
しかし俺には何の落ち度も無く、俺を想ってくれている彼女Kがいる。
Sと付き合う為にはKと別れなくてはいけない。
(この時二股って考えは全く無かった。真面目という訳ではなく、ばれた時に両方(特にS)を失う事が怖かっただけだと思う)
ホント自分勝手な考えだが、自分から別れ話はしたくなかった。
前述のMも同じことを言っていたが、俺の場合は同情を買うのが目的ではない。
Kの悲しい顔は見たくなかったことと、ただ単に言い出す勇気がなかっただけだ。
相手のことを考えるなら、早く正直に言ったほうがいいって言う人もいるが俺はそうは思わない。
嘘もつき通すことが出来ればそれはそれでいいと思う。
しかし、今回は違う。
一時の気の迷いではないと思っていたのでその道理は通らない。
(その証拠にSとは結婚しました)
Kに思いを伝える事ができず、時間だけは過ぎていった。
別れの日
久々のデートである。
Kを身近に感じながら、改めてKについて考えてみる。
ビジュアルについてはなにも文句はない。
それどころか正に俺の理想像。
性格についても何の問題もない。
実際、会っていると再認識させられる。
Kの魅力はなにも衰えていない。
Kにいまだに魅力を感じている自分がいることも確かである。
それならなぜ別れることを考えているのか。
理由は分かっている。
現状(K)に満足していても、新しい物(S)が出ると性能(性格)は分からなくとも興味がわいてくる(こんな考えをしているのは俺だけではないと思うが?)。
それとKとSの性格が全く違っていた(正反対って程に)ことも理由の一つだ。
Kは考えも、立ち振る舞いも大人だ(会っている時も決してべたべたしてこない)。
逆にSはまだまだ子供。
一緒に歩いている時もふざけて腕を組んできたりと、とにかくいちゃいちゃしているのが大好きってタイプ。
どちらかと言えばいちゃいちゃタイプの俺は、Kに振る舞いに物足りなさを感じていた。
その両者の違いもあってか、俺は新鮮味のあるSに益々惹かれていった。
何時ものように食事をして、ドライブ(親父の車を拝借)。
そして俺の部屋へ。
当然のことながらセックルへとなだれ込む。
昼間(この時は昼間と言うよりは遅い午後って感じだった)のセックルは眠気を誘う(ただでさえ寝太郎なのに)。
セックルが終わり、少し話しをしている最中に俺は眠ってしまった。
どれぐらい寝ていたのだろうか、俺は気配を感じて起きた。
11月頃だったと思うこの時期、暗がかりの中、背を向けて着替えをしているKの姿が。
「うん?どうしたの?」
K「帰る」
着替えの手を休めずKが答えた。
「帰る?なんでよ?まだ早いじゃん?」
K「・・・」
「まだ帰らなくてもいいじゃんか。こっちおいでよ」
そう言いながらKの方へ手を差し伸べた。
その手から身をよじるようにするK。
「?なに?どうしたんだよ?」
K「帰るのっ」
冷たく言い放つK。
いつもと違うKの態度に戸惑いと不安を感じた。
えっ!?なに?俺が寝ている間に何か起こったの?
もしかしてSから電話がきて、それをKがとったとか?えっ!?ホントなに?
俺はプチパニック状態に陥った。
「ねぇ~K、どうしたんだよ?なんなんだよ?」
K「別にどうもしない。帰りたいから帰るの」
Kのこの態度の理由が分からないことと、寝起きも悪さも手伝ってか俺はKの態度に少し(かなりかな?)イライラしてきた。
「帰るってどうやって帰るんだよ?」
K「電車で」
「電車でって・・・ねぇ~!K!どうしたんだよ!?なにっ!?」
語気を強めて俺は言った。
K「帰りたいから帰るの!それにH君眠たいみたいだしね」
この皮肉るようなKの言葉に俺はカチンときた。
「眠たいみたいって・・・なんだよ、いつも(俺)寝てるじゃん!?なんで今日に限ってそんなこと言うんだよっ!?」
K「だから~寝てていいってば。邪魔しちゃ悪いから私帰るね」
自分が寝てしまったことで、この状況を招いてしまった後ろめたさがあった。
その思いを払拭しようと俺は必要以上にムキになった。
「なにそれっ?その言い方なんなんだよ?」
K「ねぇ~?なんでH君が怒るの?」
「怒ってねぇ~よ!」
どう見ても怒っている口調で俺は答えた。
ケンカ(いつも俺が一方的に喚いているだけだからケンカとは言えないが・・・)になりそうになると、いつも一方的にKの方が折れるためケンカなどしたことが無かったため、こんな口調でKと話すのは初めてだった。
K「怒ってるじゃん。H君が怒るのはおかしいよ~?そうでしょ?」
諭すようなKの口調が更に俺の感情を逆撫でする。
「おかしくねぇ~よ!Kの方がおかしいよ!」
K「私のどこがおかしいのよ~?」
心外といった感じでKが聞き返してきた。
もう完全にあったまきた。
「Kの態度がおかしいんだよ!俺いつもと同じ(寝ていること)じゃん?なんで今日に限って帰るとか言ってんだよ?訳わかんねぇ~よ!」
K「帰りたいから帰るの」
「・・・」
なんで今日に限って意固地なんだよ?いつもは折れてくれるじゃん?どうして?なんで?機嫌直してくれよ?
ホントはそう言いたかった。
しかし、なぜ強い立場(惚れられている)の俺が折れなきゃいけないのかという自意識過剰な疑問と、意味のないプライドが邪魔をしてその言葉が言えなかった。
そのセリフを言ったら俺の負けだ。
(勝ちも負けも、最初から勝負になっていないんだが・・・)
何も返す言葉もなく、引き止めることもできないまま無言状態が続く。
これ以上言っても無駄だ。
今日はこれで終わりにしよう。
しかしこのまま帰しては気まずいままだ。
少しでもKと一緒にいて話すきっかけを作りたかった。
「送ってくよ。着替えするからちょっと待ってて」
K「いいよ。送っていってなんて言ってないじゃん。私が勝手に帰るんだから。H君は寝てていいよ」
最後の望みが絶たれた。
大げさかもしれないがこの時そう思った。
今の俺の気持ち(Sに気持ちが傾いている状況)で、今日のこの気まずい雰囲気のままKが帰ってしまうことは致命傷だ。
このままずるずるとKと付き合っていても意味が無い。
俺の気持ちはもうKから離れている。
少し前から思っていたそんな考えがふと頭をよぎった。
いつか話さなくていけないことだ。
感情的になっている雰囲気も手伝ってか、俺は意を決してKに言った。
「ねぇ~K?」
K「なに?」
「俺たちもう別れよ」
K「えっ?」
驚くでもなく普通に聞き返してくるKの反応に、一瞬聞こえなかったのかと思い少し間をおき、再度言おうと口を開きかけた時Kが言った。
K「いいよ。でも理由ぐらいは教えてくれるんでしょ?」
幼稚園の先生がいけないことをした子供に、優しく問い質すようなそんな口調だった。
やけに淡々としている。
普通ならもっと感情的になるんじゃないか。
このKの態度を見て、Kも俺と同じようにもう気持ちが離れている。
俺はこの時そう思った。
「理由?」
K「そう。それぐらいは聞いてもいいでしょ?」
正直に他に好きな人が出来たと言えばよかったと思うが、それではKが可哀想だと思った。
それと同時に俺はこの期に及んでもまだ、自分をよく見せたいと思っていた。
(この思いの方が強かったかしれない)
今までとは違った環境で生活を送っていて、今はその環境に慣れる事が最優先で自分のことだけで精一杯。
Kのことを考える余裕はない。
そんなことを言ったと思う。
全く自分勝手な言い分だと思った。
俺は当然、Kの反論があると思っていたがそうではなかった。
K「そっか・・・」
つぶやくようにポツリとKが言った。
K「H君、色々タイヘンなんだね。私、自分のことばかり考えてて、そんなH君のこと何も考えてなかったよ。しつこく電話とかしてごめんね」
俺はこの時Kのことを考えるより、この無茶な言い訳が通じてよかったと思った。
K「これ以上H君の負担になるのイヤだから、これで終わりにしよ」
修羅場にならずにすんだこと(Kの性格を考えるとあり得ないことがだ)に安堵するとともに、あっさりしすぎるKの態度に少し寂しさを感じた。
いくら気持ちが離れているとはいえ、俺は別れることは悲しい。
Kは悲しくないのか?俺はこの時はそう思った。
後日Kの友人から聞いた話や、俺と別れた後自暴自棄になるKの生活態度をこの時に知る事ができれば結果は違っていたかも知れない。
その話を聞かされた時、俺は初めてKの俺に対する愛情の深さに気づかされた。
しかしもう遅い、時を戻すことは誰にもできない。
K「H君、最後に聞いてもいい?」
「なに?」
K「私と付き合って、楽しかったと思ってくれてた?」
このセリフを聞いた途端、なぜか涙が溢れてきた。
今までの楽しかった思い出が脳裏を駆け巡る。
楽しかった、
すっごく楽しかったよ。
Kと付き合えてホントよかった。
Kと付き合っててイヤなことなんて一つもなかったよ。
楽しい思い出しかないよ。
俺みたいなヤツと付き合ってくれてありがとう。
俺のわがままでごめん。
俺はそう言いたかった。
しかし言葉にならない。
手で顔を覆い泣いた。
俺は溢れる涙を止める事が出来なかった。
K「ねぇ~H君、泣かないでよ」
優しいKの言葉がより一層悲しさを誘う。
K「ねぇ~H君」
何度も何度も俺を呼びかけるK。
呼びかけられる度に楽しかった思い出が蘇ってくる。
どれぐらい泣いてたのかな?俺はようやく落ち着いてきた。
K「もう、H君泣かないでよ。なんだが私が苛めてるみたいじゃん。それに泣きたいのはこっちの方よ」
そのKの明るく言う口調に救われた。
「うん・・・ごめんね」
K「で、楽しかったって思ってもらえてるのかな?」
「楽しくなかったわけないじゃん。Kと付き合えてよかったよ」
K「そっ、ならよかった」
笑顔を交え満足げ答えたKが続けた。
K「ねぇ~私の最後のお願い聞いてくれる?」
「なに?」
K「最後にキスして」
「えっ!?それはちょっと・・・」
K「ダメなの?どうして?」
どうしてって・・・
もう別れる二人がキスするのはどう考えてもおかしいだろ?この時はそう思った。
K「私、今まで付き合ってきてH君にわがまま言ったことあった?なにもないでしょ?これで最後なんだから、それぐらいきいてくれてもいいでしょ?」
「・・・」
尚も躊躇している俺に近づきKが言ってきた。
K「思い出と、踏ん切りをつけるためにキスしたいの」
Kはそう言い軽く唇を重ねてきた。
K「H君と付き合えてホントよかったよ。色々な思い出ありがとう。じゃH君元気でね。たまには電話してもいい?」
そういい残しKは一人で帰って行った。
俺はもうこれで最後だからと思い、送っていこうと思いKを追いかけた。
「K、ちょっと待ってよ。送っていくから」
K「いいよ。一人で帰れるから」
振り向きもせずにKが答えた。
「送るぐらいさせてよ」
そう言った途端Kは泣き出した。
普段人に弱みを見せないKが、人目もはばからず人通りの激しい往来で泣いた。
ホントは泣きたかったんだろうけどずっと我慢していた、こらえきれず涙があふれ出てきたそんな感じだった。
そのKの姿を見て俺は自分の勘違いと、Kの俺に対する気持ちに気付いた。
俺はバカだ。
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俺に気持ちがないじゃないんだよ。
俺の負担にならないように、いつも我慢していたんじゃないか。
なんで今頃気付くんだよ。
いくら大人っぽいとは言えまだ18歳、不満も言いたかっただろうし泣きたいときもあったに違いない。
なにも言わない=不満がないって勘違いしていた。
そんなKに甘えていた俺は大馬鹿野郎の最低野郎だ。
声を出して泣いているKを抱き寄せながら俺は後悔した。
もっと前に気付けばよかった。
でももう遅い、一旦離れてしまった気持ちを元に戻すことはできない。
「ごめん・・・」
泣いているKに、他にかける言葉が見つからなかった。
「ホントごめん・・・」
少しの間俺の胸で泣いていたKだったが、やがて泣き声もやみ落ち着いてきた。
K「ごめんね、じゃ送って行ってもらうね」
そう明るく言いながら顔を上げるKの目にもう涙はなかった。
「別れの時に流す涙は、相手や自分が可哀想で泣くのではない。これから先、愛する人を失った悲しみに耐える自分を思って泣くのである」
自分に甘えることなく、決して人に弱みを見せないK。
俺の負担にならないようにと平静を装ってくれたK。
別れの時のKの振る舞いと、この言葉の意味を意味を理解できたのは、かなり後になってからである。
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